「今度からはちゃんと足元見ろよ。でも、あんな大きい箱持ってたら階段は見にくかったし、仕方ないと思う」

あ、これはただの励ましだ。

どう考えても落ち込んでいる私に気遣ってくれている。変な勘違いも良いところだ。

純粋に励ましの前置きとして鈍臭い女子が好きだと言ってくれてたと気づき、かぁっと頬が熱くなる。

耐え切れずに俯くと、まだ私が落ち込んでいると誤解したのか、

「だから今日のことは気にしなくていい」

───その人は花が咲くようにふわりと笑った。

助けてくれた上にメンタルケアまでしてくれるなんてどれだけ出来た人なんだろう。

その優しさにぎゅうっと心が締め付けられる。

見つけてしまった。

出会ってしまったかもしれない。

確信は出来ないけど明らかに心臓の音が速くなっているのがわかる。

じわじわと込み上げてくる熱は暑さのせいだけじゃない。

「……好き、かも」

小さく呟いた言葉は空気に飲み込まれて消える。

単純な私は溶けるような柔らかい微笑みに、簡単に恋に落ちてしまった。

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