第13話



 「キミには、戻りたい世界はある?」


 「戻りたい世界?」


 「うん。もし過去に戻れるとするなら、キミはどこに飛びたい?」



 「過去」に、戻れるとするなら。



 穏やかな風が、サッと通り過ぎるように吹いてきた。


 戻れる時間なんてない。


 それはもうずっと、頭の中で考えてきたことだった。



 「…よく、わからないんだけど」


 「そうなんだ。おかしいなぁ。ここに来る人はみんな、「過去」に囚われてる人たちなんだけど」


 「過去に?」


 「うん。会いたくても、会えない人。そういう人がいると、ここに迷ってしまうんだ」



 ——空を見て。



 猫は、そう言った。


 見上げると、さっきまでなかったはずの飛行機雲が、青い空の下にまっすぐ線を引いていた。


 それだけじゃなかった。


 その飛行機雲を追いかけるように、無数の飛行機が、音を立てるでもなく飛んでいた。


 積乱雲の連なる地平線。


 その、峰に向かって。

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