第13話
「キミには、戻りたい世界はある?」
「戻りたい世界?」
「うん。もし過去に戻れるとするなら、キミはどこに飛びたい?」
「過去」に、戻れるとするなら。
穏やかな風が、サッと通り過ぎるように吹いてきた。
戻れる時間なんてない。
それはもうずっと、頭の中で考えてきたことだった。
「…よく、わからないんだけど」
「そうなんだ。おかしいなぁ。ここに来る人はみんな、「過去」に囚われてる人たちなんだけど」
「過去に?」
「うん。会いたくても、会えない人。そういう人がいると、ここに迷ってしまうんだ」
——空を見て。
猫は、そう言った。
見上げると、さっきまでなかったはずの飛行機雲が、青い空の下にまっすぐ線を引いていた。
それだけじゃなかった。
その飛行機雲を追いかけるように、無数の飛行機が、音を立てるでもなく飛んでいた。
積乱雲の連なる地平線。
その、峰に向かって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます