第65話

<アカネへ



僕は君に

出会えて幸せです。 雄大>



僕が

書いた手紙だった。


いつのまに

埋めたのだろう。


加奈はそれをみると

立ち上がり、


遠くの方に離れていった。


ここは二人の空間だと

思ったのだろう。



もう一枚を


ゆっくりと

慎重に開いて行く。


心臓の鼓動が

バグバグと

手を揺らしている。



その時、


はらりと

紙の隙間から

何かが滑り落ちた。


降り積もり始めた

純白のじゅうたんの上に


一枚のオレンジ色の葉が

落ちていた。


別れた日に

ここに咲いていた


秋の桜だった。


あの日、


加奈は随分早くから

待っていたみたいだった。


きっと

このためだったのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る