第23話

火を止め、


近くに置いていた

タオルで

どうにか涙を拭き、


桜模様の皿を出して

二人分盛りつける。


深呼吸して笑顔を作り、

それぞれの皿に

スプーンを突き刺して


部屋に戻った。


「おまたせ」


「わー美味しそう」


「言っとくけど

味の保証はないぞ」


「いいの、大ちゃんが

作ったものが

食べたかっただけだから」


一応、確認するために

僕は先にひと口食べた。


涙で味付けされた炒飯は

少ししょっぱかった。


「ちょっと、しょっぱいかな」


「いただきます!」


アカネは手を合わせてから、

スプーンと持って

少なめのひと口を口に運んだ。


僕は息をのんで

彼女を見つめた。


「…美味しい」


そう呟く彼女の目が

微かにうるんでいるようにも見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る