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第16話

いよいよ迫ってきていた

ある日、


アカネはこんな事を

言い出したのだった。


「私ね、お墓参りって

行ったことないの。


ほら、私親戚とか

いないから。


その、もしよかったら

大ちゃんのじいちゃん、


一年前に亡くなった

って言っていたでしょう?


私、


そこにいったら迷惑かしら?


一度してみたかったんだけど

…ってこんな事言って

不謹慎よね」


「え、そんなことなら

もちろん構わないさ。


でも、

別に良いもんじゃないぜ?」


「えっ本当?

やった、嬉しいわ!」 


僕には一体何が

そんなに嬉しいのか

分からなかった。


ただ、墓石を掃除して、

花を入れて、

線香をつけて、

拝むだけだ。


楽しい要素なんか

一つも含まれていない。

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