第一章 金色
京の都
第1話
■■■■
「御子ができたって?」
真白くんは、振り向かずにそう言った。
ただ、初夏の柔い風が真白くんの髪を撫でている。
その言葉に、どういうわけか胸が詰まる。
知られたくないとか、そういうわけではないけれど複雑な心境になる。
「え・・・ええ。恐らく。まだしっかり見てもらったわけではないからわからないけれど。でもいると思う。」
「・・・そう。別に姫が心配することは何もないよ。」
真白くんは、少しだけ振り返る。
目は合わないけれど、その唇が形良く弧を描いていることを知る。
それを見て、ふっと心が軽くなった。
「私が、心配することはない?」
尋ねると、真白くんは足を止める。
そうして、手を繋いだまま振り返る。
ようやく目が合って、ほどけた心がまたぎゅっと締め付けられる。
「ないよ。北畠が全力で護るから。お産に慣れた女官を用意する。何も心配することはない。」
やっぱり、胸が詰まる。
嬉しいと思う前に、真白くんがそう言ってくれることに胸が詰まる。
そこまで全力で私を護ってくれることが、度を過ぎて誰かの目に映らないか心配になる。
「・・・真白くん。」
眉が歪む。
声が擦れる。
「何?」
「それは、真白くんの立場を悪くしない?」
私はそうなるのが怖い。
真白くんが非難されやしないかと思うと苦しい。
主人がある身の女に、入れ込んでいるとか、良からぬ噂が立ったら、とか。
それは間違いなく、真白くんの行く道を阻むものになるから。
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