第94話

「い、行かないわ。」






行かない。



京へは。






「・・・彼は生きているわ。」






「名を、名を叫んで切腹したんだ。宮様以外のはずがないよ。」




「だとしても、彼は!!」






思わず声を荒げる。




「彼は?」




真白くんは尋ね返した。



淡々と、抑揚もなく。





どうしてそんなに抗うの?と言う隠された言葉と共に。







「彼は、生きているわ・・・。」







きっと。



つうっと、頬に涙が伝う。




一筋。






「生きているわ。」





この先何十年も。



この700年前の日本で。




一人で。








「死んでいたら、どうするの?」








真白くんはやっぱり淡々と言った。




その目だけは私をじっと見つめて。








「そんな仮定、好きじゃないわ・・・」




「好きとか嫌いとか、どうでもいいんだよ。これはお前の未来だ。どうするの?」






どうでも。




そう、私の未来。

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