矛盾

日月 希

最低の矛✕最低の盾

大学に行きたい。

そのためにはお金がいる。

我が家にはお金がない。

だから、大学には行けない。

でも、国公立大学は別。

安いからね。


これは分かる。


そして僕は先天性の病気で、極力運動を避けるように医者から言われている。

体を60%以上の力で動かすと、えずく。

つまり運動はおろか、日常生活で行う動作すら痛みを伴う。

常にハンデを背負うのだ。


これも分かる。


僕はそんなに頭が良くない。

だから、勉強を頑張らないといけない。

人よりも多く勉強しなくては大学には行けないだろう。

もっと勉強して、勉強して、勉強して、大学を目指すべきなのだ。


これも分かる。


僕は頭が良くない。

もしかしたら大学に落ちるかもしれない。

でも、落ちたらそこでおしまい。

家族に負担をかけられないから、就職する。

どこでも。何にでも。


ここまでは分かる。



でも、人一倍勉強せねば受からないであろう僕に、お金もいらない僕に、病気で運動は厳しい僕に、バイトをさせるのは変じゃないか?


やれば出来ない事は無いかも知れない。

それこそ死ぬ気ですれば可能だろう。

本当に16歳で死ぬくらい頑張れば。


…家族からこれを半強制的にさせられるのはハッキリ言っておかしい。

僕も確かにバイトはした方が良いとは思う。


でも、働いていたとして

・欲しい物が無い

・貯めたお金で私立大学に行ける訳でもない

・勉強時間が減る

この三連コンボだ。


僕にとって得がない。

強いていうなら就職に有利になるくらいだろう。


皆、僕が落ちる前提で話を進めているのだ。

それならいっそ夢なんて見せなければいいのに、お前には無理だと言って理不尽に働かせてれば良かったのに。


家では肩身が狭い。

ここで大学を諦めたら僕の心が、頭が、おかしくなってしまう。

でも、辞めなかったら?

ただでさえ無視され始めている僕の意思はどうなる?


怖い。怖いのだ。

諦めてこの家に、家族に屈するのがこの上なく恐ろしいのだ。


僕に能力が無いのは理解している。

だが、無能の努力を笑うのは、無能に分かるように笑うのは辞めて欲しい。 

それも、一番僕を信じて欲しい家族に

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矛盾 日月 希 @hituki-nozomi

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