雅なる詩

夢ノ命

第1詩 【暮天一夕(くれてんひとよ)】


移りゆく空を


ひねもす


見ていたいのである



何時(いつ)しも空は


愉快で


何故か


愛(いと)おしい



森(いよよ)かに山岳は周(めぐり)


西南(ひつじさる)の方へ


邑里(むらざと)へ越え通う


たぎたぎしく凶骨(きょうこつ)なまでの


悪しき路(みち)は


風化し害疾(そこな)はれ


八岐(やまた)に裂(さ)けて


這いずっている



高天(たかま)は ひどく透きとほり


火を鑚(き)るような


蒼天(あめ)いろをうつしている



峯谷(をたに)に好愛(めずら)しい赤松が生え、


逆巻き湧きかへる


谷のみづの頭(ほとり)に


文人作りの赤松が生え、


身の躰(かたち)を桂月(つき)と累(かさ)ね合わせ


木末(こぬれ)に颯々(さや)げる


寂寞(しづ)かな候(とき)だの


金(あき)の雫だの


懐懐(おもいおもい)に


み手を携え


合わせ逢っている



山の岩窟で


山人が


ねもころに


山の宍(しし)を喫(くら)う



朽ち堕(くず)れかけた


宍(しし)の百(もも)にくを


皓歯(しらは)で穿(ほぜり)ながら


多日(ながく)逢(あ)はない


怖き美しい暮天一夕(くれてんひとよ)を



罪ないの扇を閉じて


懐(おも)いかえしている

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