掴めない距離感

第94話

通知表がない夏休みって、なんて幸せなんだろう。



私たちの通っている高校は2学期制となっていて、形式的には10月の初めに春学期が終了し通知表が渡される。つまり、あの憂鬱な代物を手にせずとも、私たちには夏休みがやってくるのだ。




「ねえ、陸~、こんどいつ試合?」




夏休みが始まったある日、陸の家のソファでプリンを食べながら、さっき部活から帰ってきたばかりでぐったりとしている陸に問いかける。



大方の予想通り3年生の引退後にキャプテンになった陸は、いつも部活が終わるとへとへとになっていて、少し心配になってしまうほど。




「練習試合なら、一応今週の木曜にあるよ」


「ん、わかった!観に行っていい?」


「いいけど、熱中症になるなよ」


「だいじょーぶ、体力には自信あるから!」




一応ミニバスのコーチの話もあったけれど、一緒に走ったり、満足に練習もできないコーチってどうなんだろう、って思って断ってしまった。

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