村岡紗葉(15)の春学期
入学式
第3話
「じゃーん!」
「おー、似合う似合う」
「ねえほんとに見た!?」
「見た見た」
ずっとずっと憧れていた高校の制服。
まだ新しい匂いのする、身体にフィットしていないそれを身につけ、喜びが抑えきれずにくるくると回ってみせる。
この制服を着ている姿を一番に見せたかった、幼なじみの陸の適当な反応も、本当に辛かったこの1年間を思えばなんてことない。
1年間、本当に長かったなあ。
陸が桜森高校に進学して、1学年下の私は中学に残った。桜森高校は家から近くはあったけれど、中学とは正反対の方向で。
住宅街で隣り合った家の私たちが、こんなに会えないものなんだって思うくらいに見事に会えなかった。
それでも部活がない日とかは、陸は私に勉強を教えにきてくれて。桜森高校に合格できたのは、きっとそのおかげだと思っている。
「ほら紗葉、入学式遅れたらやばいだろ」
「はーい。お母さん、先行ってるね~!」
未だにスーツの色に悩んでいるお母さんに声を掛け、腕を出してくれた陸にいつものように捕まりながら、新しい深いブラウンのローファーを履く。
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