第184話

ーーーー…その瞬間。



ぐいっと腕を引かれて、一瞬で暗い空き教室に連れ込まれる。




「…っ」




声にならない叫び声。


でも、次の瞬間、違う意味で心がドキドキ騒ぎ出す。そう、コウくんの香りを感じ取った瞬間。




慌てて後ろを振り向くと、まだ暗さに慣れていない目でも、大好きなコウくんをはっきりと認識する。




「コウく…っ」


「しっ」




真っ直ぐなコウくんの鼻筋に合わせたように、真っ直ぐぴんと伸ばされた彼の人差し指が、私の顔の前に見せられて。



唇にそっと触れた冷たい手に、きゅんと心臓が収縮する。




「あれ?紫花はー?」


「えっ!?さっきまでいたよね!?」




私がいないことに気づいた麻耶たちが、カツカツヒールを鳴らしながら戻ってくる。



こんなところ見られたらどうしよう…。


私を抱きとめたように包み込むのは、あの桐谷光綺なのだ。どんな騒ぎになるのか、もはや想像がつかない。




そんな緊迫した空間なのに。




「ちょ…!コウくん…!!!」




まるでシェリみたいに私の首筋の匂いを嗅ぐコウくん。



アップされた髪のせいでダイレクトなその感覚は、全身を一瞬で駆け抜けて。

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