第59話



グレーのフレアが重なるティアードワンピースに、オールドローズのバックストラップミュール。




少し背伸びしすぎかと思ったけれど、コウくんの運転で到着したホテルはどうみてもかなり格式高くてこのくらいでないと逆に浮いてしまいそうだ。




「ほら」




今日は何処までも私をお姫様らしく扱うらしいコウくんは私に海外経験で培った本場のエスコートをする。




「ねえ、どうしてここの予約するとき私の苗字を使ったの?」


「偵察も兼ねてるから桐谷ってバレると面倒だろ?」


「偵察?」


「父さんがホテルビジネスに参入したいらしいんだよな」


「ふーん、すごいね」




絶品のオイスターチャウダーを口に運びつつ適当に相槌を打つと、もう少し興味持てよ、とコウくんは苦笑する。




「瑛茗祭は?何やんの?」


「カフェになった。メイドと執事どっちもとか欲張りすぎだよね。ていうか定番すぎない?」


「俺も喫茶店やったよ。普段は自分たちがメイドやら何やら雇ってる癖に、文化祭とかのときはそういう仕事をやざわざやりたがるんだよな」


「確かに」




クスクス、とふたりの笑い声がハミングした。



思っていたよりも格式高いレストランに緊張していたけれど、そんな私の心をコウくんはほぐしてくれる。

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