第74話

ちらっと中を覗いたその人と、ぱちっと目が合う。




「あ、いた。」



「あ、来た。」



「…すみません。」



「いえいえ。」




申し訳なさそうに、カララ、と音をたてながらドアを開けて、エースが教室に入ってくる。



私の前の席の机に荷物を掛けて、ギギ、と音を出しながら、椅子に座った。




「本当にいるとは思わなかった。」



「…え?自分で言ったんだから、いるに決まってるじゃん。」



「そうだけど。なんかノリで言ったのかと思ってた。」



「私はいつでも全力投球だよ。」



「…そうすか。」



「………はい。」




そこまで話して、2人とも勉強道具を出し、勉強を始めた。



ペンの音と、野球部の掛け声。私たちの呼吸だけが静かに広がる教室の中。

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