第13話

「いわばしる?」



「石走る、って書く。水が石の上を流れていくってこと。」



「へー、」



「春になった喜びを躍動的に表現してて、万葉集の歌の中でも結構有名。」



「そうなんだ…。」




今まで進学校生だし、大学受験だけ成功すればいいや。



そう思って模試とかで頻出の問題しかやってなかったけど。



そんな自分が情けない。



私、何も知らない。


この進学校にいるから、って満足したら駄目なんだ。




少し感傷的になる。全然私に似合わないけれど。




「で、なんで志貴なの?」



「この歌作ったのが、志貴皇子って人だったから。俺の親、本当和歌とか好きなんだよな。姉貴の名前もだし。」



「あ、いろは先輩?」




懐かしい名前を聞いて、とっさに反応してしまった。

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