朝の係
どうしても諦めきれない恋に希望が
私は「朝の係」になった
暗いうちにゆっくりと扉を開いて
玄関で待機する
太陽がカーテンの隙間から光を滑り込ませた瞬間
「夜の係」がやってくる
私を一瞥もせずに
部屋から退出していく
私はベッドで寝息を立てる彼女を
数分間眺めることが許されている
朝食を用意して
着替えを用意して
鞄を用意して
私の役割は終わる
目覚ましが鳴って彼女が起きると
私は玄関に向かい
靴の準備をする
彼女は朝恋愛を求めない
だから私は朝恋愛を求めない
それでもきっと何かが変わって
私と彼女の距離は近づいて
きっといつかは
ある日彼女はいなかった
夜の係が一人で眠っていた
私はいつも通り用意をして
玄関で待っていた
ふらふらと夜の係がやってきて
視線を合わせて首をかしげた
昼の係がやってきても彼女はいないまま
二週間が過ぎた頃
私は夜の係を起こして
二人で朝食をとった
一か月が過ぎた頃
昼の係も私たちを手招きし
三人で食卓を囲んだ
三か月がたった雨の日の昼
彼女は戻ってきた
濡れていて痩せていた
三人はしばらく立ちすくんでいた
「ふられちゃった」
彼女は言った
四人は静かな昼食の後
ベランダから外を眺めた
時折稲光が照らす彼女の横顔は
美しいけれど尊くはなかった
そして再び彼女はいなくなった
三人は変わらず用意を続けた
きっといまや三人は
朝に昼に夜に
恋をしているのだ
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