パンタグラフ中心の生活

パンタグラフを盗んだけれど大きすぎるよ

部屋の中で一番目立っている

特に電車が好きなわけではなくて

音の響きが好きだったから

こんな大きいとは思わなかった

パンタグラフ中心の生活


日が経つにつれて愛着もわいてきた

時折さびしげな顔を見せることもある

やはり電線が恋しいのだろうか

今この瞬間を自由と思えなどと

そんな傲慢を言える人間ではなくて

冷たい体をさすることしかできない


パンタグラフは泣いている


どこにいても思い出してしまう

パンタグラフは心の中でも

一番大きな存在になってしまった

血管へと手を伸ばし

電気を求めるパンタグラフに

首筋が痛んでしょうがない

パンタグラフが全てになって

パンタグラフだらけになって

パンタグラフがパンタグラフの

パンタグラフをパンタグラフった


パンタグラフを返してきた

部屋からは全てが失われてしまった

心はその形さえ失ってしまった

もし生まれ変われるならば

電車になりたい

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