異世界王女と使用人、毒舌令嬢を連れて日本に転移する。ただ、よく分からないので動画投稿やライブ配信で生活したいと思います。(3人の軌跡)

蜂鳥タイト

フィナリア・アスリーンの軌跡帳


 私はフィナリア・アスリーン。とある国で、とある王女の使用人兼護衛人をしています。

 さて、今私はとある日本という国からこの日記を書いています。

 どうして日本来たのか、それは、魔族の反乱により、私と王女、令嬢が逃げているとき、崖に阻まれ囲まれてしまい、その時に崖から飛び降りたことにより、私たちは日本にやってきました。

 理由はわかりませんが、落下中に転移魔法のようなものが見えたのは覚えています。

 さて、日本に来た理由はここまでとして、この軌跡帳には、前世の記憶を忘れないために日記として残そうと思う。

 書く内容は【王女との出会い】です。



 私は昔、貧困かつ食糧難に陥っている村で育てられました。

 体はやせ細り、ただひたすらに畑作業しているだけ……

 そんなある日のことです。

 私は普通に畑で作業をしていました。


「おう! こいつはいいや!」


 と1人の男が私の手を掴んできたのです。

 その時の私は力がなく、抵抗しようとしてもただ引きずられるだけでした。


「いや! 離して!!」

「ははは! お前みたいな弱い小娘が抵抗できるわけないだろ! いいから来い!」


 できる限り必死に抵抗しましたが、その努力はむなしく、背中に手を回され両手首に縄を付けられました。

 このまま死ぬんだなと思いましたね。

 そして、そのまましばらく引きずられていると馬車が見えてきたのです。

 私はその馬車に無理やり乗せられました。

 周りには私の他にも、精霊族や獣人の子供たちが乗せられて手を縛られています。


「こいつは高く売れるぜ」

「大儲けだな!」


 男たちの会話が聞こえてきます。

 どうやら私は奴隷にされるようでした。

 このまま売られてしまうのだろうか……

 そんなことを思っていると馬車が走り始めます。

 既に私は恐怖に飲み込まれそうになっていたと思う。

 家族に会いたい。

 そうただ一心に願うだけでした


「なんだ!? お前らは!!」


 男の叫ぶ声が聞こえたと思ったら、今度は馬車が急停止をする。

 真ん中でかつ手足を縛られていたので、バランスが取れず前まで転がり壁にぶつかる。

 すごく痛くて思わず半泣きになった。

 外は大乱闘になっているのか、剣が交わる音、悲鳴が響き渡っている。


「私が来たからにはもう安心なさい!!」


 そんな声が聞こえた。

 私がゆっくり顔を上げると、そこには白いドレスを纏っている少女が立っていた。

 

「ディア嬢様! いけません!」


 使用人だろうか? 女の子が馬車に入ってくるのを止めようとしている。


「うるさいわね! この子たちを助けるのが私の仕事じゃないの! あんたはただ私の護衛だけしてなさい!」

「す……すみません……」


 ディア嬢……聞いたことある。

 スラム国を統治している王族の次期王女となるお方……

 そんな高貴なお方がどうしてここに?

 そんなことを考えていると、私と目が合ってしまいました。


「ねぇあんた名前は?」

「はい?」

「名前よ! なまえ!」


 ディア嬢がそのまま歩いてきて、私の顔をのぞき込んできます。

 近い近い……


「ふ……フィナリア・アスリーンです……」


 声が震えている。 

 今までの恐怖と、あまりにも高貴な存在を前にして声が出せるはずがない。


「フィナリアね! あなた私の使用人になりなさい!」

「……え?」

「ちょっとディア嬢様!!?」


 外にいた使用人が叫んでいる。

 それもそう……何せこんな薄汚れた私が、ディア嬢様の使用人なんて……


「え……あ、その……」

「ぐちぐち言ってないでさっさと行くわよ! もう決めたの! フィナリア! あんたは私にとってとっても大切な存在だわ! 使用人! ちゃんとこの子供たちをスラム国に送るのよ!! 家は私が手配するわ!」


 ディア王女は、私の手に結んである紐をナイフで切ると、私の笑顔で手を掴み引っ張って馬車の外に出た。


 こうして私は、ディア王女の使用人兼護衛人をすることになった。

 これからもディア王女の使用人兼護衛人として、強くなりしっかり恩に報いることを誓い、終わろうと思います。

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