心霊スポットは出会いに溢れていた。
午後の善茶
第1話 初めての心霊スポット
夏も終わりに近づき、蝉の声も聞こえなくなった秋の始まりに職場で男どもが騒ぎ始めていた。昨晩放送された「日本のヤバくて怖い心霊スポット47都道府県」通称ヤバ怖について話しているようだった。
「おい!昨日のヤバ怖見たかよ!?〇県の心スポやばくね?!」
「見た見た!そこも怖かったけどよ、俺的にはトンネルのとこが怖かったんだよな~、よく一人で行けるよなあんなとこ。」
心霊スポット・・・最近リューチューブでもよく見かける、霊感なんてない私には興味がない。そう思っていたのは昨日のヤバ怖をみる前までだった。
私の名前は犬神 レイナ。
フツーの会社に就職して早三年、順風満帆な社会人生活を送っている。
「犬神さん、心霊スポットとかに興味あるんですか?」
ぼけーと話に聞き耳を立てていた私に声を掛けてきたのは同僚で同期の
「あ、竹本くん。ちょっと気になって...」
「そっかそっか、昨日のヤバ怖面白かったからねー。」
「竹本くんも見たの?」
「まぁね、それよりもさ、それ
竹本くんは私の机の上の書類を指さして呆れた顔をしていた。ぼけーとして話を聞いていた私は頼まれた書類にほぼほぼ手を付けずにいた。
「ご、ごめ!すぐやるから!今日中に終わらせるから!」
「わかった、しっかりやってくれたらそれでいいから。」
そう言うと竹本くんは自分のデスクに戻って行った。
竹本くんに指摘されてから私は書類作成と普段の仕事を同時進行で進めていた。
「やだ、もうこんな時間...」
時計を見ると21時を回っている。集中して時間を全く気にしていなかったようだ、お腹も空いたし、仕事も一通り終わったし、ビールでも買って帰るかなーなんて思って伸びをした。帰ってもどうせ独りだしやる事ないし、彼氏?は?何それ初耳の言葉なんですけど?昨日はホントなら楽しみにしていたドラマの【愛のフォークボール】見るはずだったのに、つけてみたらヤバ怖画録されてるし...愛フォに出てる
「終わった?」
「うぉ!びっくりしたなぁ!急に声掛けてこないでよ!」
「いやさぁ、犬神さんが頑張ってたしなんか声かけるの悪いかなーって」
「待ってたの?なんか悪い...」
竹本くんの手に目線をやるとその手にはしっかりとクイッチ(携帯型ゲーム機)が握られていた。
「え?あ、いや。待ってたんだ。」
「クイッチしてんなら手伝ってくれても良かったじゃん。」
「仕事は仕事、これはこれ。」
「ふーん、で、なんの用で待ってたんでしょうか?」
「無いんだ...」
「は?」
「だから、出ないんだよ!硬玉!」
「ざまぁwwww」
今大人気のゲーム、化物ハンター通称バケハンしてやがった...普段はみんなが居るからって喋り方気をつけてるくせに、私といる時はこんな喋り方になるんだよね。そもそも竹本くんとは入社して少しして仲良くなった。まだ誰かとご飯食べたりってすることがなかった私は、昼食の休憩時間にクイッチでゲームをしていたら竹本くんが声を掛けてきた。ゲームの話で盛り上がり、そこからよく一緒にゲームをするようになってご飯なんかも行くようになった。
「飯奢るから手伝ってくれよ!」
「えー...仕方ないなぁ...」
どうせ帰ってもやることないし、という訳で私達は近くのファミレスに入ることにした。
「そういえばさ、昼のヤバ怖の話だけど...罠貼ったよー。」
「りょ!捕獲するであります!...あ〜そういやぁなんか珍しく聞き入ってたね。なんかあったん?」
「はい捕獲ー!不思議に思ってたんだよねー」
「玉来い!玉来い!何が気になるん?だー!来ねぇぇ!」
「満天隧道でさぁ、お笑い芸人のラミィの
「ふざけ!なんで俺に出ねぇんだよ!ってあぁ、1人検証のとこね。」
「物欲センサー出しまくりだからじゃない?うん1人検証のところ。あ、ご飯来たよ、ゴチになりまーす。」
私達はゲームを辞めて運ばれてきたご飯を食べながら話をした。私は時間も時間なのでサラダとスープを、竹本くんはガッツリラーメンを食べていた。彼いわくここのラーメンは命のラーメンらしい...知らんがな。
「そうそう、でね、なんでみんな1人検証とかいってるのかなーって。」
「は?何言ってんの?どう見ても1人検証だったじゃん。カメラ持たされて一人で中に入っていったじゃん。」
「それよ、あそこ一人じゃなかったでしよ?小さい女の子がもう一人いたじゃない?」
「は?」
「だからなんでみんな1人検証って言ってるのか分からなくてさー。」
「いやいや、間違いなく油介さん1人だったぞ?」
「え?だって一緒にいた女の子が見つけて見つけてっ言ってたじゃん。」
「え?」
私の思考は一瞬止まる。待って、みんなが間違ってるんじゃなくて私だけがあの子見えてたの?霊感なんて無いし、幽霊なんて見た事ないんだけど。
「満天隧道か...そんなに遠くないな。」
「何言ってんの?今から行くつもり?」
「とりま飯終わったら送ってくよ、車で来てるからさ。」
「行くの?ねぇ!何かあったらどうするの!」
竹本くんはその後何も言わずにご飯を食べ終わると、車で私の家の方に向かってくれた。前にも送って貰ったことあるから道はわかってるみたい、この後竹本くんは一人で満天隧道に...
「ねぇ。やっぱりやめなよ、興味本位とか遊びで行くもんじゃないでしょ?よくいうじゃん。」
「それな、俺はさ好きで昔から一人で心霊スポットとか行くんだよ。」
「マジで言ってるの?あんなとこ良く一人で行けるね。」
「まじまじ、でないつも思うんだ。興味本位や遊びで行かないでくださいって言ってる本人たちはなんで心霊スポットに行ってるんだ?って。仕事だから?仕方なく?それこそ心霊スポットにいる霊を刺激してるんじゃないかって。コレは俺個人の考えだからさなんとも言えないんだけどね。心霊系リューチューバーだって同じでしょ?そこが事件になったり無くなったりした人がいて、その霊が現れる。その霊を動画に納めるために行くんでしょ?で行った後に遊びや興味本位で行かないでって、おかしなこと言ってるなって。」
「まぁ...」
「興味があるから心霊番組や心霊系リューチューバーは成り立つわけであり、それを見る人も少なからず心スポに興味があるから見るわけでしょ?まぁタレントのリアクションが面白いってのもあるだろうけど。」
「正論ぶつけてきたよこの人...」
「俺は興味本位とその場所になぜ霊が残るのか、そこに何があるのか知りたい。って本気で思ってるんだ。」
そう言う竹本くんの運転する横顔は真剣そのものだっ。
「わかった!分かりました!じゃぁ私も行く!事の発端は私の言ったことだし、それで竹本くんに何かあったら私が嫌だし!だから私もついて行きます!」
「は?マジで言ってる?」
「マジよ!連れてかないって言われても着いていくんだから!」
「はぁ、何が起こるかわからないぞ?」
「私しか見えないなら私が行かないと意味ないじゃない?」
「まぁ確かに。」
「しっかし竹本くんがオカルトオタクとかびっくり通り越して笑えるんだけど。」
「あまり言わないようにしてるからな、キモがられるのわかってるし。」
「じゃぁなんで私に話したの?」
「そりゃ話の流れだろ?会社で言わないでくれよ?」
「えーどうしようかなー?」
「ほんとやめて。今度また奢るから。」
こうして私の初めての心霊スポット体験が始まった。
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