第61話 トリック・オブ・ドリーム⑸

「ど、どういう事よ!あれ!」

「あいつ、初めから自分が出るつもり無かったんじゃないか?色々あった西川と小島をぶつけて、西川に勝たせてお前のプライドを折ろうとしてる…みたいな」

「なるほどね、たしかに那月さんに負けるより、西川に負ける方が不服だわ…。考えたわね、あの子。それに…」

 小島は、改めて西川を凝視する。等の西川は、完全に怖気付いてしまい、ぷるぷると震えていた。そんな西川に変わり、那月が相浦に応答している。まぁ、喋ると男子ってバレるかもしれないしな。…ん?あの服、どうやって…。

「結構上等な服だよな…、って、もしかして!」

「そう、多分だけど、オーダーメイド」

「メイド服のオーダーメイド…、ぷふー」

「あれ、ゴスロリってだけでメイド服じゃないし、お前そう言うしょうもないネタ好きだよな…」

 でもそうか、これ、本気で勝ちに来てるな。アピールタイムは、那月と西川が一緒にポーズをするというもので、ひとつのポーズごとに歓声が湧いた。

「ぐぬぬ、可愛い…」

「まぁ、あいつの本業だしな…。普段から撮られてる分、どうすれば可愛いかってのは分かるんだろう」

「私も不知火くん達とパフォーマンスしたから、ずるいなんて言いたくないけど…、さすがにズルくない!?禁止カードでしょ!」

「一歩間違えたら本人が参戦してきたわけだし、それよりかいいんじゃないか?」

「たしかにね…、あー、人気者への道は険しいなー」

 諦めたように、小島が笑う。どこか清々しいような、そんな笑顔だった。

「人気者か…、確かに、那月は人気者だな。でも、きっとお前の魅力に気がついた人は居るよ」

「ん、私もその1人ー」

「わわ、春宮さん、くっつきすぎ」

 佳奈が、ぎゅっと小島に抱きついた。しかし拒否されてしまい、「ふぬ…」と考え込み、そして何かを思いついたようで、手でぴょこんと耳を作り、猫なで声でこう言った。

「甘えさせて欲しい、にゃ?」

「はぅ!いいわよ、甘えさせてあげるー!」

「にゅふー」

 それでいいのか…。小島は佳奈のことを抱き抱えて、すりすりと頬擦りした。佳奈は、甘やかされるの大好きだからな…。俺もその甘やかすひとりなのだが。佳奈が可愛いのがいけないんだ、しょうがない。

「あのー、これから3年生のステージなので、そろそろ…」

「あ、ごめんなさい!」

「ほら、春宮さん、行くわよー」

「ふにゅー」

「しょうがないわねー」

 そのまま佳奈を抱き抱え、小島が観客先へ履けていく。ほんとにこいつ、佳奈に弱いな…。

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