第47話 素直になれば⑷
「不知火、お客ー」
昼休み。文化祭の優勝特典である1ヶ月学食割引券を使い、昼食を食べようと立ち上がったところを正樹に声をかけられ、入口の方に目を向ける。
「少し、いいかしら」
「小島、何か用か?」
「お願いがあって…。お昼食べながらでも良いけれど…」
「あ、俺は別に後で食べても…」
そこまで言いかけたところで、ぎゅー、とお腹が鳴る。なるほど、こいつがお腹空いてるのか。
「わかった、なら行こうか」
「えぇ!」
助かった、とでも言うように小島が笑顔を振りまく。その時、俺は背後から迫ってくる殺気にも似た威圧感に気が付かず、案外子供っぽい笑い方をするんだなと呑気なことを考えていた。
ぐぬぬぬぬ…。付き合いたての彼女をほっぽって女の子とふたりごはんを食べに行くなんて…!
「許されない!」
「佳奈ちゃんどしたの?」
「ぎるてぃー!」
「ちょ、佳奈ちゃん!?サンドウィッチが悲しんじゃうよー!」
引き止める紗霧さんを尻目に、脱兎のごとく速さで教室を飛び出した。居ても立っても居られなくなったのだ。勢い任せに飛び出し、廊下の柱の陰に隠れる。
な、なんか楽しそうに話してる…。
「うぬぬ…!」
「何やってんだ、春宮」
「西川くん…!」
あぁ、そうか。打ち合わせが終わって学校にやってきたのか。
「気にしないで」
「気にしないわけないだろ、誰かいるのか?あれは…、不知火と小島!?」
「朝3人で話してて、気がついたらこんなことに。西川くん、あの人のこと苦手でしょ?だから、私一人だけで追いかけようと思ってたんだけど…」
「なるほどな…、つまり浮気調査か」
「うわー!」
「あたあた。殴打やめろ!」
「全く、浮気なんて…!西川くんのこと心配してあげない!」
「心配してあげない…か。いいなそれ。心配して損したじゃない辺り、良心が垣間見えるな」
「冷静に分析にしないで!」
「って、あいつら下るぞ!」
「え!?」
西川くんの言う通り、2人は談笑して階段を下っていた。それを、私たちも追いかける。それはさながら、ミッションインポッシブル!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます