第19話 新たなCEO
「スタンピードッ!!───場所は……あ〜。 そこまで慌てる事は無いか」
叫んでみたが、実際のところそこまで慌てる事じゃないだろう。
スタンピードと聞くと様々な小説やアニメの描写からものすごくやばいことのように想像するかもしれないのだけれど……、実際は直ぐに処理されるので、気にしなくていい事態である。
一応街の中で武装を使う事になるのだが、その時は純粋に火力が下がってしまうので街の中で大惨事を引き起こす事は無い。
確かダンジョンの外と中では神秘が異なるために、そう言った現象が発生するとか何とか。
まぁそこまで焦る必要は無い。
実際梨奈もユナも同じように冷静沈着さを取り戻していたしな。
****
……その日、ダンジョンの外に魔物が出るスタンピードが起きた。
その数実に2000件。
スタンピードが発生したのは主にダンジョンの近くのビルの中などをの、本来起きるはずのない場所でのことだった。
その結果、武装をしていなかった民間人、高齢者などが多数犠牲となる大惨事となった。
そしてそこで問題となったのがスタンピードの発生に対し、殆どの冒険者が参戦をしなかったということであった。
これは心理的な話になる訳だが、"きっと誰かがやってくれる"という心理が働いた結果、その近くにいた全ての冒険者が誰か任せにしたのである。
……悲しいことに、それにより無数の罪なき人が犠牲になった。
それを受けて、冒険者協会は新たなCEOをたててこの事故の対策に乗り出したのであった。
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「皆さん。 こんにちは。 ええ、わたしは新しい冒険者協会のCEOである……『クローシス・フルフェイス』と申します」
テレビ画面の中でCEOが記者会見を開いていた。
左右には美人な女性とか、強そうな冒険者とかを従えて真ん中にズン!と座っているのが、新たなCEOであるクローシス・フルフェイスさんだ。
フルフェイスの名の通り、彼はスーツ姿にミスマッチなフルフェイスの鎧を携えて、そこに座っていた。
あまりにも場違いすぎると、記者から突っ込まれていたが、彼は───、
「勘弁してください。 私の顔にはやけどの酷い痕が残っているのです。 なるべくお見苦しい顔を晒して、人々を不快にさせるぐらいならば、私の顔は見せる必要が無い。 そう判断した迄ですので」
しっかりとした受け答えにより、誰も文句は言わなくなった。
その後フルフェイスさんは淡々と今回の事故の説明と、改善案を提案し、更に今回の事故以外のここ数日間のダンジョン内部で起きていた騒動について、事細かに説明をしてくれていた。
そのうえで、彼はこんな事を言い出したのだ。
「───そして、ひとつ提案なのですが。 皆さん、ランクがあまりにも別れすぎていて……面倒だと思いませんか? なのでこれより、Sランク、Aランク、Bランク、Cランクとします。 これに関しては予算などの面から、あまりにも区別に時間がかかること───そして分かりにくさの部分からそう考えました。 ちなみに反対の意見があれば、明日までにフォームに送信してください」
……その発言は、あまりにも何を言っているんだ?!
と思った人が殆どだったのだが。
実際ボスを一人倒した程度でBランクからAランク帯に入れるのはどうなのか?とか。
AAランクは必要なのか?とか。
結局AAAとSの区別がどうやって判断しているのか分からないという点などが議論された結果─────。
次の日より、ランクの再取得試験期間が始まることになってしまったのであった。
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