【結論】どうやら俺はボス戦だけが出来ないらしい。〜《無称号》と笑われていますが”そもそも”挑めないだけで最強ですが?

ななつき

第1話 その明日は俺の物じゃない

 ───ダンジョン攻略の醍醐味とは何だろうか?


《レアアイテムを拾うこと?》確かにそれもあるね。


《絆を結んだ仲間との共闘?》あー熱いね確かに。


《無名からの成り上がり?》最高だ。


 まぁ色々あると思う。

 だが間違いなく、これだと俺は思っている。


 それは────



 *




「ついにここまで来たぜ! ……くぅぅ!腕が鳴るぜぇ!」


 そう言うと黒髪トゲトゲヘッドの快男児が楽しそうに腕を鳴らす。


「ちょっと! いきなり走り出すんじゃ無いわよ!」


 少し遅れて金髪の美少女が走ってきた。少しだけばてているのか、はたまた緊張からなのかは分からないが若干息が荒そうだった。


「ふ、2人とも早すぎますっ! せ、せめてもう少しゆっくり走ってくださいいっ!」


 さらに遅れて黒髪の美少女が走ってくる。手には杖を持ち、それを支えにしながら足をぷるぷるさせていた。


「「アンタ/お前は 体力が無さすぎる/わよ!!」」


 先に現着した2人はとても仲良さそうに声を揃えて叫んだ。


「ふ、2人が高校生なのに早すぎる……だけ、です……って……」


 怒られた女性はしょげながら、文句を言っていた。


「───まぁまぁ、落ち着いてください皆さん。 この後はボス戦だけなんですから、それこそ焦る必要は無いですよ。 それよりも息を整えてから挑む事を冒険者組合は推奨していますし、ここは一旦……ですよね?」


 3人は俺の方を見て確かに、と頷く。


「ま、まぁそうだな。 よしじゃあ俺が持ってきたコラコーラで乾杯しようぜ!」

「あ、アンタそんなもの持ってきてたの?!

 馬鹿じゃないの炭酸だよそれっ!?」

「はぁ? ダンジョンのボス部屋前で飲むコーラってのは最高って知らねぇのかよ?瑞希みずき!」


 瑞希、そう呼ばれた女性は呆れたように男に詰め寄ると……。


「匂い、どうするのよ! 和也かずや!! ダンジョンって貴重なのよ? そこの中にこんな炭酸甘ったるい飲み物を持ち込んで……もし零したりしたらダンジョンの生態系が……」


「そ、それは大丈夫ですよぉ……瑞希さん……。 ダンジョンはボスが倒されると中身がリセットされて持ち込んだものは消えますから……。 (で、でも匂いに惹き付けられて魔物が出てくるかもしれませんから……そ、そこはなるべく……)」


「な!葉子ようこさんも言ってるだろ? ほらな!って事で早速……」


 俺はすぐに止めに入る。


「まぁ待ちたまえ少年。 コホン!確かにダンジョン内はリセットされるから持ち込み物の影響は心配いらないのは事実だ。 だが、な? ソイツは祝杯として取っておくべきものだと俺は思うんだが? 今使って良いのかい?」


「……た、確かに……。 分かりました!あのボス《ヘビーメタルドレイク》を倒したらにするぜ! 」


「はぁ……まぁそれならいっか。 んなら早くしよ、さっさと倒して私早く風呂入りたいし! 」


 そう言うと、2人はすぐに武器を構えてボス部屋の方に走っていった。

 彼らの向かう先には、巨大な門があり……そしてそこの前には召還ゲートのようなものが光っていた。


「あ、あの……ありがとうございます悠雅ゆうがさん……。 私達見たいな初心者パーティをここまで……」


 葉子さんはそう言うと深々と俺に礼をする。俺は少しだけ照れくさくなったので、誤魔化しつつ。


「気にしなくていいって。 それよりも君達がこれから築く伝説の立役者になれることを俺は誇りに思うよ。 あ、そうだ────君達!……ボス戦前に強化魔法バフだけ掛けとくから!」


 俺はそう言うと、彼らにバフをかける。身体能力強化、防御力上昇などの様々な効果を一気に纏めてかける。


「え、良いんすか!? ありがとうございます! 絶対倒してきます! 」

「そうね、絶対倒して上がるわよ!……Aに!」

「そうですね、私達で達成しましょう!」


 そう言うと彼らは走り出した。

 その後ろ姿はとてもかっこよく……。

 既にであった頃の初心な彼等とは違うのだなぁ、と俺はしみじみと眺めていた。


 そうして彼等が走り出したのを横目に見ながら、俺はゆっくりと引き返す。

 そう────ここまでなのだ。

 本当は彼らの戦いを手伝いたい、そして彼らの戦いの結末を見届けたい。


 だけど無理なのだ。

 俺には───武藤むとう 悠雅ゆうがにはその資格がないのだから。


「まぁ、彼らなら大丈夫さ。 多分ね。……うん、見たかったなぁ。 …………戦いたかったなぁ……」


 なぁなぁ である。

 だが、仕方の無いことなのだ。

 割り切る他は無いと言える。


「さてと、帰りますか。 ───ゲートオープン」


 すぐに帰還用のアイテムが起動し、俺の姿はダンジョンの外に移動した。


「はー。 まぁ彼らの活躍はどうせSNSにでもすぐにアップされるだろ、うん。 まぁそしたら──またひとりぼっちか。 まぁ仕方の無い事だけどね」


 彼の口癖は、”まぁ” と” なぁ ”である。


 そうして彼は、ゆっくりと武器をアイテム収納用のカバンにしまって帰路に着くのであった。


 *


 次の日、SNSには彼らの名前があった。

 それを見て俺はただ一言だけ祝辞をぼやいた。


「───おめでとう。 そしてさようなら。 俺の手の届かないところで、思う存分羽ばたいてくれよ。 ……こんな万年Bの男の事なんてさっさと忘れて…………な」


 言ってから自分でも虚しくなった。

 ので俺はスマホをの画面を布団に押し付け、それから彼等を見習って、朝ごはんの用意をする為に少しだけ走り出すことにしたのだった。



 _________________________


 ───武藤むとう悠雅ゆうが

 年齢24才 男。ちなみに童貞。


 冒険者ランク《B》の、至って普通の冒険者。

 特筆すべきはユニークギフトスキル《無名ネームレス

 その効果は───雑魚敵程度であれば、ほぼ全てワンパンもしくは瞬殺できる程の魔法を使える様になる。というチートユニークギフトスキル。


 その代わりに……という莫大なデメリットと引き換えに、ではあるが。


 余談であるが彼はBランクになってから既に7年が経過している。

 ……ちなみに世間からの認知度はほぼゼロ。












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