(元)オッサンコレクター、異世界でも自慢のコレクションを作る。
四宮銅次郎
第1話 コレクター
気づいた時、私は四十を過ぎていた。仲の良かった連中はいつの間にか身を固め、子供を授かっていた。最後に遊んだのは何年前だろうか。もう気軽に会えるような関係ではないのが、少し寂しい。
気付けば一年を通して一人で過ごす日々が続いていた。両親は早くに亡くし、兄弟親戚とも疎遠。ほぼ天涯孤独の身、と言えるだろう。お前も早く貰えよ、と言われたが妻と子を養える甲斐性など私にはない。残念だが、これが私の人生なのだ。
ワンルームの格安賃貸マンションなのに部屋がやけに大きく感じる。そりゃそうだ。家具は必要最低限。衣服は会社用のスーツと、数着の普段着だけ。女も賭け事にも興味はなく、出世コースからはとっくに外れてるので接待ゴルフを嗜む必要も無し。
そりゃ虚しさはある。だが、今更もう変えようが無いのだ。
二十代は光陰の如く過ぎ去り、三十代すら遠い過去のものだ。完璧にオッサンと呼ばれる世代に入る。もう若くはない。始めたところで手遅れだった。
だが――私には一つの自慢があった。
殺風景なワンルームを彩る唯一の色彩。それは並べられたトレーディングカードだ。子供のころから集め続けていたが、気づけば膨大な数になっていた
中には当時、ワンコインで買ったのにプレミア化してとんでもない値打ちになった奴もある。
私の人生は確かに他人から見れば、味気ないものかもしれない。だが私自身は満足していた。こうして集めてきたカードは私の歴史でもある。それを眺めながらの晩酌は乙なものだ。
テレビでは青年がインタビューを受けている。自慢のコレクションと言って、とあるカードゲームのレアカードを見せて自慢げに語っていた。
フッ、甘いな。私も持っているぞ。何なら、君がゲットできなかったと嘆いていたカードも収蔵済みだ。
明日は隣町で限定カードが発売される。転売、徹夜組対策で整理券は事前に配布されている。あとは悠々と手に入れに行くだけだ。
昔は数日前から並んだものだ。確か一週間前から張り込んだ事もあったな……。
そんなこんなで今ではオッサンコレクターと呼ばれている。自分でも日本一を自負しているのだが、特に取材された事は無い。偉い人には分からんのです。
おっと、気づけばいい時間だ。余裕があるとはいえ、寝坊してしまっては本末転倒だ。明日に備えてそろそろ寝よう。
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