ちっちゃい虫と私

ぬっこ

第1話 旅のお手伝い

 私はちっちゃい虫が好きだ。よく春から夏にかけて沢山飛んでいるあのちっちゃい虫だ。名前は知らない。


私は通勤に自転車を利用しているが自転車を漕いでいるとよく服にくっついてくる。かわいい。因みにたまに目の中に入ってくるがそれは嫌だ。




 今日もまた天気がいい。心地よい風を感じながら自転車を漕いでいると私の袖の上にちっちゃい虫がとまった。


―あ。ちっちゃい虫さん、おはよう。

ー…。

―どちらまで?

ー…。

―今日風もあるから途中で振り落とされないようにね。

ー…。


ちらちらとちっちゃい虫の方を確認しながら自転車を漕いだ。ちっちゃい虫はちっちゃいが為にもしかしたら降りたいところで降りられないかもしれない。羽を広げたら降りたい合図だ。でもこの子はまだ降りる気がないらしい。ついには駐輪場にまで付いてきた。私が自転車を止めると「いってらっしゃい。」と駐輪場のおっちゃんが手を振ってくれる。おっちゃんはちっちゃい虫には気づいていない。 


「いってきます!」


私はちっちゃい虫に当たらないように注意しながら鞄を背負って駅までの道を行く。


―あれ?まさかキミも駅まで行くつもり?

ー…。


駅の改札は通勤、通学の人たちでいっぱいだ。ちっちゃい虫はちっちゃいが為にちょっとしたことですぐに死んじゃう。だから人がいっぱいのところを通るのはちょっとだけ気を使う。


―行くよ!変な所で落ちちゃったら危ないからしっかり掴まっててよ!

ー…。


改札を通り、駅のホームに着いた。ホームも人でいっぱいだ。私も電車を待つのに2列に並んで待つ人たちの後ろに並んだ。すると線路を挟んだ向こう側に菜の花が沢山咲いているのが見えた。


―綺麗だな。


ふと袖のところを見ると丁度ちっちゃい虫が飛び立とうと羽を広げているところだった。


―キミはココに来たかったの?

ー…。


ちっちゃい虫は飛び立っていった。私も待っていた電車が時間通りに到着したので電車の中に乗り込んだ。

どうやら私はちっちゃい虫の旅のお手伝いをしたようだ。


今からお仕事。でも心はちょっとウキウキ。



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