第3話 再び歩み始めた二人

それからというもの、悠真と美咲は頻繁に連絡を取り合うようになった。忙しい合間を縫って、たまに食事やカフェで会う日々が続く。高校時代の話や近況報告をしながら、二人の関係は再び深まりつつあった。


そんなある日の夜、二人はまたいつものカフェで会っていた。日が沈み、街の明かりが窓に映える頃、ふと美咲が口を開いた。


「ねぇ、悠真。最近どう? 仕事は順調?」


「まあ、なんとかやってるよ。でも、大したことないさ。普通のサラリーマンだし、特に変わったこともないかな。」


悠真は肩をすくめながら答える。だが、美咲は少し首をかしげて、じっと彼を見つめた。


「悠真ってさ、なんでそんなに自分を卑下するの? 昔からずっとそうだけど、私はそんな風に思ってないよ。」


その言葉に、悠真は驚きを隠せなかった。彼女にそんな風に言われるとは思っていなかったのだ。


「別に卑下してるわけじゃないんだけど、ただ…現実を見てるだけかな。美咲みたいに大成功してる人に比べたら、俺なんて本当に普通だからさ。」


「でも、私は悠真が普通だなんて思ってないよ。いつも冷静で、誰かを傷つけたりしない。そういうところが、昔から好きだったんだ。」


「好き…だった?」


悠真は動揺しながら、美咲の言葉を反芻した。思わず聞き返してしまうと、美咲は少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「ごめん、変な言い方しちゃったね。でも、本当にそう思ってたんだよ。高校の時も、みんなが悠真をどう思ってても、私は違った。」


「そうだったんだ…。俺は、美咲がずっと遠い存在に思えてて、話しかけるのも勇気が必要だったよ。」


悠真は、自分がずっと抱いてきた感情を正直に打ち明けた。美咲との距離感を、当時はどうしても埋められなかったことが、今になって少し悔やまれる。


「でも今は、こうしてまた会えて話せてる。だから、距離なんてもう関係ないよね?」


美咲は優しく微笑んだ。その笑顔に、悠真は少しずつ心の重荷が軽くなるのを感じた。


「そうだな…ありがとう、美咲。なんか、今の話を聞いてちょっと救われた気がする。」


「良かった。悠真にはもっと自信を持って欲しいな。だって、昔から優しいし、ちゃんとした人だから。」


その言葉に、悠真は少し照れながらも微笑みを返した。

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