第54話:競争? 現代最強

 ルナに乗りながらも、俺はダンジョン内を駆けていく。

 ……彼女の権能を補助しながらも魔物を倒して、中央の木の方へと向かい続ける。

 湧き続ける魔物達、倒すことは問題ないものの……あまりにも敵の数が多いせいで、結構スタミナが心配。

 

「……しかも、なんかいつの間にかどっちが先に辿り着けるかみたいになってるし……これだから戦闘狂は」


 人柄はよかった……優しく真面目な人だということも理解できた。

 でも……それが霞むほどの戦闘狂なのは、如何なものだろうか? と軽く愚痴をこぼしながらも、召喚獣の皆の気を静めるためにも頑張ることにした。


 どうやらルナ達は、俺が攻撃されて結構怒ってたっぽくて――過保護だとは思うが、彼に負けたくないらしい。

 ……その矛先が大和さんに向いてないことを安堵しつつも、完全に滾っているので……落ち着かせるにはダンジョンを攻略するしかなさそうだ。


「攻略するなと言われてたけど、明らかにこれを放置は不味いしな」


 彼……大和さんの勘は大体合ってて、俺の肌感覚では最初に潜ったダンジョンである【龍塚】レベルだ。しかもそれと違ってモンスター出現するタイプのダンジョンと異界型の複合。


 その両方の特性を併せ持つってことは……完全に独立した世界で魔物が湧き続けるかなり危険なダンジョンであることが分かる。


「……それを考えると、政府の恩恵を預かる以上ちゃんとした方が良いよな」


 デメリットとしてはダンジョンの宣伝や今みたいに仕事をしっかり受けなきゃいけないという点で……メリットとしては素材の売買が出来たり、ダンジョンに好きに潜れたり、資料の閲覧という俺にとっての一番の恩恵があるし……それに有事の際に、仲間を集められるというのがある。

 

 国や政府というものを完全に信用は出来ないが、この現代でダンジョンにどうしても潜るには必要なことだし……凄く悩んだが、受け入れるしか無かったのだ。


「まあ最初から激務だとは思うけどさ」


 魔物を倒して、ドロップ品を集めながらも奥へ奥へと進んでいく。

 かれこれ三十分は進んでいるが、一向に減らない魔物達……それどころか増える気がするし、少し疲れる。


「……特に虎とか俺の知識にも無い魔物だし、まじでなんなんだここ」


 ダンジョン名は世界の声で最初に入った者が分かると言うが、燐君に聞いた限りここは【巨大樹の森】とかいうあんまり危険度を感じない名前だったのに、【朱曜の夜樹国】とかいう物に変わっていて訳が分からない。


「……倒すことは出来るし、問題ないんだが――っとソル、前方の蛇を頼む!」


 返事は唸り声、その瞬間に太陽の焔が放たれて蛇が消し炭となり牙のみを落とす。

 ……それを回収し、耐性は持ってるけど毒が出てきたのを見てすぐに魂にしまって……俺はさらに奥へと進む。


「――やっと着いたけど、流石に巨人の群はキツそうだな」


 前回のサイクロプスよりは武器も棍棒のみで弱そうではなるのだが、如何せん数が多い。前が三体だったのに対して、今回は軽く十匹を超えているし、インフレというわけでは無いけれど……この数は時間が掛かるだろう。


「先に着かれたか、やっぱりすげぇな! ――というかどうやってその召喚獣達を維持してるんだよ? 百魔の嬢ちゃんも驚くぞ、それ?」


 どうしようかと数分悩んでいると、刀を構えた大和さんが別方向からこっちにやってきた。返り血を浴びてかなりショッキングな光景になっているものの、傷は一切無くその強さを感じさせる。


「……大和さんも凄いっすね、あの群で怪我一つ無いなんて」


「そりゃあ三日もいるわけだしな、帰れねぇし攻略するか迷ってたところで坊が来たわけで無様な姿は見せられねぇだろ? それと最初に言ったが敬語は無しだ。俺とここまで競える奴に敬われるとかちょっと嫌だぞ?」


「分かり……分かった。で、どうするんだ?」


 ……心底露骨に嫌がる彼に、また敬語で返しそうになったが認めてくれた相手がそう言ってるわけなので、言い直してそう言った。


「巨人は狩るぞ――外に出る気配はねぇが、溢れる可能性がある……そしたら変異種の誕生だ」


「あーそっか、変異種って魔石の食い合いで起こる場合もあるんだよな?」


「そういうこった――じゃ、ここからは共闘だ? 確か坊は支援も出来るんだろ? 試させてくれや」


「了解……」


 感覚戻すためにも五人分の支援は慣れておいた方が良いし……とそれから俺は、周囲全体に支援魔法をかけて……そのまま大和さんと一緒に巨人へと挑みはじめた。


 巨人らしく体力が多く、魔法にも僅かに耐性があるが……流石にルナとソルの炎と冷気。何よりリコリスの毒に耐えられるわけが無く、数を確実に減らすことが出来ている。


 その合間に俺は大和さんの方を確認していたのだが、あの人マジで凄かった。

 達人という言葉の通りに、滑らかな刀の使い方、俺のバフもあるだろうが最初一瞬だけ見せた動きをより洗練させて――俺のバフにすぐ適応したらしい。


 俺の支援魔法というのは、普通に効果量が高くそれに慣れるまでには少し時間が掛かるのでいつも調整して使っている。だけど、今回はルナ達のついでにかけてしまったのでそれがない。


「それなのに……合わせるとかやばいな、ほんと」


 原理は分かる。自分の体という物を完全に理解した上で、使われた魔法を考慮して動くというそれだけのことなのだが……言葉にすればわかりやすいが、それがどれほど難しいか理解して、思わず笑みが漏れた。


 これが現代最強の冒険者、配信には政府の依頼以外で映ることの無い……未知数だった彼。その力の一端はミソロジアでも通用すると思わせるほどで――。


【一定数の魔物の減少を確認――試練を開始します】


 刹那のことだった。

 突如として、無機質な世界の声がダンジョン内に響き渡り……魔力が中央の木から溢れ出す。


 木の色が変わっていき、紅葉し始めて……そして最後にあれほど巨大な木が枯れて――生誕を祝うように世界の声の声音が変わって。


【今宵巨大樹は枯れ――最後の灯火が暴れ出します。永遠となれ夜樹国よ! ボス・ゴライアスが出現します――さぁ試練を、冒険を始めてください!】


 そして、木から魔力が一気に迸り――数十メートルはあるだろう、朱色の巨人がこの場所に出現した。

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