第2章:黒ローブ誕生
第11話:ダンジョン攻略完了
「おいあんた無事か?」
二人の必殺を受けて消えた黒龍。
静寂に包まれるダンジョン内の祭壇で、俺は腰を抜かしている男に声をかけた。
「な、なんなんだよお前!?」
「あ、その……一般通過黒ローブ?」
流石に本名を名乗るわけにもいかないので、少し考えた結果そんな風に名乗ったんだが……なんか動揺しながらも凄い微妙な顔をされてしまう。
【龍塚が攻略されました十分後にダンジョンは消失します】
その瞬間の事だった。
そんな声がダンジョン内部に響いたのは。
「……え、消失? ダンジョンって消えるのか?」
「そういやここ――異界型! 速くしないと消失に巻き込まれ――」
見知らぬ単語を口に出しあり得なくらいに慌てる男。
事の重大さを理解できてない俺は焦る男に落差のあるテンションで声をかけた。
「えっと、あんた……それって巻き込まれたらどうなるんだ?」
「馬鹿かよ!? 死ぬに決まってるだろ!?」
「それ……やばくね?」
「ッ転移門何処だ!?」
ひとまず気になることだらけだが、とにかくその転移門というのを探さないと不味いらしい。流石にこの場所自体が消失したら何も出来ないし、俺でも焦る。
『同接が二十万人を超えました!』
そしていざ探そうとなった時、なんかさっきから男の側で浮いていたスマホ型の何かからそんな機械音がした。
…………同接って、あの同接?
え、同時接続者数の略のあれか?
「あのさ、慌ててるところ悪いんだが……配信、してる?」
「それどころじゃ無いだろ!?」
「待ってくれ俺にとってはそれが一大事なんだよ――え、これ全世界に配信中? ネットの海に放流されてるのか?」
「してるけどなんだよ、とにかく転移門探せ!」
さっと血の気が引いていく。
力を隠さないとと思ってたのに、全世界に配信されるとか不味い。
というか……まじでやばい、語彙がなくなるくらいには慌ててしまう。
慌てながらも俺はすぐさま魔力反応を確認する。
そしてこの魔物がいなくなったダンジョンで一際目立つ魔力が集まってる場所を見つけたのでそれだろうと推測。
「――えっと、魔力反応的に祭壇の奥にあるからそれ使ってくれ」
「なっ何したんだ?」
「いいからえっと俺は――逃げる!」
俺は身体強化をフルにかけ、そのまま転移門とは逆方向に走り出した。
俺の意図に気づいたのか気づいてないのかは知らないが、二人が着いてきてくれたのでそのままルナに乗った俺はすぐにステルスを指示して来た方向に逆走した。
ソルはステルスが出来ないので戻してから、それはもう全力で、音速に迫るルナの疾走を生かしてぶおんという音を立てながらダンジョンの入り口に戻っていく。
「入り口――よし出て、終――了!」
俺はそのまま扉から出てのだが、扉の周囲には沢山の人だかり。
見た限りかなりの魔力がある者達が集まっていて、その中には綾音の姿もあった。
不味いと思いながらも……俺はステルスを信用して、家へ帰宅を目指す。
出来れば話題になるなよ……と心底思いながらも、俺は窓から部屋に入り……色々気疲れしながらも、ベッドに入ることにした。
「まじで妙に疲れた……というか、あれがダンジョン配信者でいいのか? 無事帰れたらいいけど」
浮くスマホは凄かったなと思いつつも、案外すんなり落ちていく意識。
――だが、この時の霊真はダンジョン配信というのを甘く見ていた。
〔なんだったんだあの黒ローブ……〕
〔黒龍を一方的にサモナーが!?〕
〔名乗りと語彙が独特すぎるだろ〕
〔勢い凄かったな〕
〔実力と頭が比例してない〕
あの場で自分を映していた相手は、若手でも上位の迷惑系配信者である【龍牙】であり……あの時の侵入禁止ダンジョン攻略という配信の内容で万を超える同接を記録してた中で一部始終が配信されてしまい、それが話題を呼び二十万もの同接を超えたことを。
そして、あの動画の名シーンと迷シーンの切り抜きは上がりに上がり……霊真が寝てる間に何百万回も再生され、トレンド一位を掻っ攫い、SNSやネットのスレでは一般通過黒ローブの話題で持ちきりに。
何より……ずっと攻略されていなかった【龍塚】を攻略したという偉業をなした彼が放っておかれるわけも無く、連日連夜特定班が稼働したんだが……爆睡する霊真は一切それらのことを知らなかった。
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