『髪を編む』

この小学校には変な噂がある。

旧校舎の一階の保健室で窓を全部開けてから窓辺のベッドに座り髪ゴムと櫛を後ろに置いておくといつの間にか髪を結ってくれるのだとか。

「なにそれ?妖精?」

私は飽きれて溜息を吐いた。


それがどうも本当らしいと噂が流れたのは翌月だった。

2組の砂子さんがその長髪を見事な三つ編みに編み込んでいた。

お洒落に無頓着な彼女を不思議に思った級友が聞くと、保健室の髪結いの噂を試したと白状した。


「でも、やめた方がいいと思う。いいものじゃなかった」

彼女はそれ以上語りたがらなかったが、なおも食い下がる級友に、

ぽつりと溢した。

「ずっと知らない名前で呼ばれて、べたべたの手で髪を触られてたの」



「ずっと〇〇ちゃんだよね?って髪を三つ編みにしようとしてたの」

彼女は震える声でそう漏らした。

「黙っていたらいつの間にかいなくなったけど…もし返事してたら…、私……」


その言葉に誰も何も言えなかった。



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