『蛆姫様』

友達の家の冷蔵庫に、それは入っていた。

「ジュースあるよ」と彼が開けた大きな冷蔵庫の上の段に、

丸められた物体が見えた。

「これ?蛆姫様」

こともなげに、友達は言った。


「お前ん家無いの?蛆姫様だよ?守り神みたいなもんじゃん。神棚みたいなもんだろ?」

冷蔵庫の最上段に入っている、新聞紙のように見えるもの包まれている、僅かに蠢いているソレを指し、さも当然のようにAは言う。


自分はその包みから目を離すことが出来ない。

包み方が甘いのか、蠢くソレは徐々に紙をかき分けていく。

ついに現れたのは、白くてきれいな、女の人差し指だった。

指はそのまま這い出でて、ぼとりと床に落ちる。


「これはねぇ、失敗したやつなんですよぉ」


包みを持っていた人はにこやかに笑いながら包みから落ち、うぞうぞと蠢いていたそれをダンッと踏み潰しそのまま去った。


その時、包みから微かな鳴き声が聞こえた気がした。



酢豆腐/芝生/花豆/Hayato



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