『放棄する砂場』

「最近増えたじゃないですか、なんにもない公園」

バイト先の喫煙所で紫煙をくゆらせながら彼女は怠そうに口を開いた。

「人が寄り付かない公園って良くないんだなあって話」

なんでもその公園には砂場だけはあったらしい。


当時住んでいた家とコンビニの間にその砂場だけの公園はあったという。

夜行性の彼女は、タバコを切らしては度々そのコンビニへ通っていた。

「ニコチン切れでイラついてたせい、だと思ってたんです」と灰を落とす。


「誰もいない筈の夜の公園なのに、ザワザワ人の声がするんですよ」

声は砂場の方から聞こえた。

「人の声と、砂を掘るザクザクって音」

声と音は公園を出るまで続き、コンビニで一服して帰る時にはもう聞こえなかった。


聞こえないなって近づいて、何故かさっきコンビニで買ったアイスのスプーンで砂場を掘ったんです。

そしたら急に埋めたくなったんで、爪剥いで埋めたんです。


小さい穴だから、ゴミで済んだんでしょうかね?



いい/どす恋!ケツ毛大明神/羽矢歌/暗裏

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