『解体した行列』

その山には奇妙な言い伝えが残っている。

「山道で行列に出くわしたら、必ず持っているものを何か一つバラバラに解体すること。そうしないと、恐ろしい目に遭う」のだという。


「昔話だろ?」なんて嘲笑った先輩に例の山に連れて行かれたのは、そろそろ大学の夏休みも終わる9月の末。

「いやでも、夜中に明かりの列が通ってた、とか聞きますよ?やめましょうって」

「なんだ、怖いんか?」


助手席に座る自分が止めても、先輩は気にせず山の中を進んでいった。

アスファルトのある道がだんだんけもの道のようになってくる。

そろそろ件の列が出てくる気がする。

すると…

「あ?」

前に車がある?


ライトに照らされて沸いて出たように車がある。

あちこちへこんだ跡が見える車体を睨み、先輩が不意に「抜かすと列が崩れて良くないんだって!」とブレーキを踏んだ。

反射で瞬きした後の視界に、崩れ落ちた道だけが見えた。




八重垣/花豆/佐藤実/みそか

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