『あの子に遭えるお通夜』

子供の頃、お通夜は苦手だった。

得意な人も好きな人もいないと思うが幼少期は周りの大人がいつもより暗く、そして不気味に見えて嫌だった。

けれども親戚の叔父の通夜にあの子に出会った。


透き通るような白い肌と、艶々した長い黒髪。

ぱっちりした大きな目と血色の良い赤い唇。

絵本に出てくる白雪姫のような美しさに、幼い私は一目で彼女の虜になってしまった。


彼女と遊ぶのも楽しかった。

子供だけで隔離された座敷でのおままごと。

彼女は色んな役を演じた。

お母さん。お婆ちゃん。大お婆ちゃん。幼いこども。

その役が、どれも死者と同じだと気づいたのは大人になってからだ。


ずっと仲良くしていた友人が交通事故で死んだ。

それが信じられず本当なのか確かめるために通夜にいった。

到着すると、遺体が交通事故にあったとは思えないほど綺麗に置かれていた。


「久しぶりじゃん」


遺体が笑った。





いい/八重垣/花豆/佐藤実

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