第72話

カンカンカンカン…ッッ




鉄の音が規則正しくリズムを刻み、遠のいていく。



「えっ…まさか」



マミヤの大きな瞳が、克穂をとらえた。




「…やられた」



克穂は小さくそう呟いて、螺旋階段を回る。




「くっそ…蜜の奴、ちゃんと捕まえてろって言ったのに…」




カツカツカツ…ッと、さっきよりも少し鈍い音が辺りに響き、克穂は足を速めた。





奏でていた愛のメロディーが終曲を迎える。




螺旋を描いて、もつれていく二人の糸。



いくつもの糸を巻き込んで、いっそう大きく、そして太く絡まっていく。



克穂は急ぐ。



愛する人のために。



千亜稀は急ぐ。



愛する人のために。




こうして


二人の糸は、いっそう深くもつれていく─…。

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