第65話

「そう…なんだぁ」




あたしはゆっくりとそう相槌をした。




ちょっと考えたけど、これ以外何て言ったらいいのか分からなかった。




「うーん…。長年の溝ってどうやったら埋まるのかなぁ…」




廊下を歩きながらも蜜ちゃんは腕を組み、右手で顎を触っている。




もしかしてその為に来日した、とかいうのが理由だったりする?



別に王子関係じゃない、とか。




━お父様が連れて行くように言われて…━




一瞬上がったテンションが、マミヤちゃんの言葉を思い出して再び落ちる。




あのセリフには蜜ちゃんの中に『理由』があるのではなく、お父様の中に『理由』があるように感じた。




「はぁ…」




あたしが零したうなだれたため息に、蜜ちゃんは「?」と横目で見た。




ガラッ



「ここの1番上に」




あたしは1階奥の隅のドアを開け、校舎の端にある螺旋階段を指差す。




蜜ちゃんがゆっくりと顔を持ち上げた。




「おぉ…すっごく眺めが良さそうだw」




思いの外、蜜ちゃんは素直に喜んで、上からの眺めに期待の色を浮かべている。




こうしてあたしたちは、ぐるぐると螺旋階段に足をかけ、登り始めた。




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