第25話
「苛つくんだよ。千亜稀が俺をシカトするとか」
王子がとんでもないことを零している。
「ふぇ?」
あまりにも驚いてしまって、あたしの口は「は」と「へ」の中間の音を出した。
「ムカつく…」
相当ご立腹のようだが、あたしはなぜか頬が緩んでしまう。
顔は玄関に背けて、少しムキになった横顔がなんだか可愛い。
マミヤちゃんの言っていた「可愛い」の台詞を思い出し、あたしは顔がニヤけてしまった。
「…ムカつく。一回壊していい?」
瞳の色がマックスに闇を帯びてあたしを見下ろす。
怒りの色が焦りの色にも見えるから、こんな状況でもあたしはニヤニヤを隠し切れない。
それがますます王子の沸点を下げていくのか、怒りの量が増量し、沸々と湧き上がっているようだった。
ダンッ
「うにゅっ!?」
王子の片手に両頬を挟まれ、あたしはさっき王子とごっつんこした後頭部をドアにぶつける。
「…誓えよ。二度とシカトしませんって」
「ふぬ!?」
王子は楽しそうにあたしの頬を挟んで、薄ら笑みを浮かべた。
サド王子の本性を見てしまった気がする。
↑すでに言っている
この男、絶対Sです!
ドSです!
もしくは極S!!
…獄!?
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