S♥10

甘い香りは蜜の味

第1話

もう少し目が大きくて、

もう少し鼻が高くて、

もう少しあごが細かったら…



なんて夢見てた。



でも、そんなもの求めなくてもいいんだ って



そのままの自分を好きになってあげればいいんだ って



思い始めてた。






でも



全てが打ち砕かれた。






自分の顔が嫌いだ。




全てが嫌だ。




どうなりたいとかじゃない。




あたしの顔、そのものが嫌なんだ。





あたしがこの顔でなければ、こんな思いを抱くこともなかった。



きっとなかっただろう。



いつか一つの恋をして、等身大の恋をして、一人の人を愛して、一人の人に愛されて、穏やかな人生を過ごす事を夢見てた。




突然訪れたシンデレラサプライズに酔わされて、有頂天になって、夢中になって、……こんな真実を知って…。



こんな思いなんかしたくなかった。



王子のことなんか知りたくなかった。




優しい笑顔や


柔らかい物腰や


…強い瞳に


イジワルなところ



そして

誰よりも何よりも大切そうに触れてくれるところ



髪を触る仕草



全てがあたしの中の宝物。




宝物だった。





全てあたしのものではなかった。





全ては



今、

隣にいるあの子のもの─…





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