短編集 百物語

空想自世界

百物語 第一話 逆さまのお月さま

「ツーリングしたいなー」

「なら一緒に行くか?後ろに乗せてくれるならだけどな。」

「ハハッ!行くか。後ろ乗れよ」

「そう来なくっちゃな」

バイク免許が取れない俺は、ツーリングしたがる友達の後ろによく乗る。 周囲はみんな免許を持っているから、免許を持っていない俺はよく煙たがれる。その中で、唯一ずっと一緒にいてくれてる友達は、割とやんちゃなやつで、ノーヘル、ナンバープレートを隠すのはあたりまえ。警察に止められそうな時も車の隙間をぬって逃げる。そんな奴が、今日はヘルメット付けろって言ってきた。本人は付けないくせに。まいいけど。ヘルメットを付けて、バイクに乗る。エンジンをかけ、進み始める。髪がなびき、夜の冷たい風が体に当たって気持ちいい。10kmほどぐるっと大回りして、家に帰る最後の下り坂。

突然、自転車が横に逸れてきて、道路の真ん中で横転した。友達は避けるためにハンドルをきった。ガードレールに激しくぶつかり、後部に座っていた俺は空中に投げ出される。回転しながら飛んでいく最中、目にしたのは、視界上部で血を流して倒れている友達、渋滞した車、輝く街の建物。そして目の前に現れたその大きく目立つその光は..


逆さまに見える月だった。

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