侍ウーマン ~婚活女侍は江戸に婿探しに行く。条件は長男以外で自分より強い人。できればイケメンで~

十三岡繁

プロローグ

 あの晩は満月だったからな。真夜中でも月明かりで何をしているのかは見えていたんだ。はっきりとしなかったのは、多分歳のせいで目が弱っているからだ。


 昼間に葬式があって、埋めたばかりの棺桶に入った死体を何者かが掘り起こしていたのさ。


 あれはこの世のものではないかもしれないね。この世のものなら、ご遺体を掘り起こすなんて失礼なことするわけないからね。


 きっと餓鬼か何かだろう。そいつら棺桶から死体を取り出すと、丁寧にまた蓋を戻して上から土を被せたんだ。


 墓を掘って確かめてみたのかって?


 仏様にそんな失礼なことできるわけ無いだろう? あたしゃこれでも人間のつもりだよ。まあ、もっとも片足は棺桶に突っ込んでいるけどね。


 死んだあとに掘り起こされたら敵わないね。私の棺桶の蓋はしっかりと釘を打っておくれよ。

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