37 斉藤
『は〜い、うるるんのDチューバーニュースの時間です。今回は先日のニュースで話題になった日本で六人目のS級覚醒者、ピロアーネ・斉藤さんがDチューバーデビューをした件です』
『●月✖︎日にD省より発表されたS級覚醒者ピロアーネ・斉藤さん。人種の国際化が進む日本でもなかなか見られない白人系の美人さんです。この方、ほんとにどこの血が流れているのでしょうね? 謎です』
『さて、そんなピロアーネ・斉藤さんが吉祥寺ダンジョンで生配信を行ったのですが、なんと通信可能な三十階までを瞬く間に攻略し、生配信は終了。その後、録画でアップされたのですが、五十階に到達して、これまでの公式記録を大きく更新しました』
『すごいですね。美人で強い。憧れます』
『さらに気になるのが、撮影をしていたのが、彼女より前にS級覚醒者として登録されたダンジョンおじさんこと八瀬川次郎さんではないのかと言われていることです』
『カメラに映ることはありませんでしたが、ピロアーネさんが彼の名前を呼んでいる場面が何度かありました。三十階までならともかく、五十階までとなると普通のカメラマンではついていけません。八瀬川次郎さんで間違いないだろうとは思いますが、では今回の攻略はピロアーネ・斉藤さんの実力なのか、ダンジョンおじさんの補助があってのことなのか、わからなくなってしまいますね』
『ともあれS級覚醒者が増えるのも、美人のDチューバーが増えるのもよいことです。今後の活動をうるるんは応援します』
『では、次のニュースでお会いしましょう。うるるんでした』
検索 #ピロアーネ・斉藤
『六人目キターーーーーー‼︎』
『ピロアーネ・斉藤wwww』
『人の名前に草を生やすでないよ』
『しかし、斉藤。なぜ斉藤?』
『知らんよ、親を恨め』
『いや、ありがとう斉藤だろう。こんな美人のS級覚醒者を日本人にしてくれて』
『それはそう』
『ありがとう斉藤』
『ありがとう斉藤』
『ありがとう斉藤』
『どういたしまして』
『お前は違うだろう』
『絶対違う』
『きっと斉藤違い』
『斉藤って日本では上位二十に入るぐらいに多い名字か』
『つまり、この中にも斉藤がいる可能性が』
『つまり、ピロアーネは俺の娘?』
『それは違う』
『絶対、違う』
『待て、もしかしたら結婚して旦那の姓になったという可能性も』
『つまり、ピロアーネは俺の嫁?』
『それも違うだろうなぁ』
『ピロアーネ様は独身処女の女神様に決まってるだろ、●すぞ』
『おお、すでに信者がいるぞ』
『怖や怖や』
『あの人、素で高慢は入ってそうだからわからせが似合いそうだよな』
『わかる』
『わかる』
『まぁ、ほとんどの奴が逆にわからせられるんだろうけどな!』
「あはははは! なんだこれは、面白いなぁ」
ピロアーネ・斉藤がスマホで機嫌よくエゴサしている。
すごいな。
私は絶対にエゴサしないんだが。
ダンジョンおじさん以来、ダンジョンコンビニの反応を調べるぐらいだ。
ピロアーネは動画配信の結果をえらく気に入った。
とにかく反応が良いのがいいらしい。
その中には肯定的なものだけでなく、否定的なものやセクハラ的なものもあると思うのだが、そういうのは気にしないらしい。
「私から目を離せないのだな。まったく可愛いじゃない」
ということらしい。
すごいメンタルだ。
というよりも、視聴者たちの発言の内容など、基本的に聞く気がないのかもしれない。
全てが自分より下の存在の発言なのだと思えば、なにを言っていようと関係がないということか。
そういう意味では、私の言葉を聞くのはピロアーネの目に入る存在であるということになるのか?
私は、転生した時にはゴブジロウ。ドラゴンとなってからはドラジロウと呼ばれていた。
ピロアーネにとっては、まさしく『目をかけていた』ということなのかもしれない。
とはいえ、『存在を認知していただけ』で恩を感じろというのは無理な話なので、扱いは今後も変える必要はないだろう。
ああ、なぜ斉藤なのかというと、日本国籍を作るときに名字の部分を新高大臣が勝手に決めたのだ。
なんでも「サイコロで決めた」とか。
一晩で全部でっち上げたのだから、名前を選べなかったのは仕方ない。
そして、ピロアーネ自身も気にしていないようだ。
「この配信というのは面白いな。次もまたやるわよ!」
ピロアーネの戦闘スタイルは、この姿でありながら格闘タイプだった。
魔法で出現させたメリケンサックでモンスターたちを殴り潰していく姿はなかなかに……壮観と凄惨を兼ね合わせていた。
「次は、手伝いませんよ」
「は? なぜだ?」
「私がいたらピロアーネの実力が証明できません。S級の箔を見せつけるためにも、次は一人の方がいいでしょう」
撮影中もジロウジロウとうるさかったものだから、私が撮影側にいたのがバレてしまった。
撮影ドローンだけではピロアーネの動きを追えなかったのだから仕方がないのだけれど。
この辺りは彼女自身に慣れてもらうしかない。
「この私に撮影と動画編集までしろというの⁉︎」
「動画の編集は美生に任せていたでしょう。彼女も自分のチャンネルがあるんですから頼りすぎないようにしないとダメです」
「無茶を言うな!」
「あなたの実力なら動画の編集ぐらいすぐに覚えられるでしょうに」
たとえ元でも女神なのだから、素の能力はとても高い。
「そういう問題ではない! ジロウ! 私に仕える者を用意しなさい!」
「嫌ですよ!」
「むきぃ!」
ピンポーン!
「あっ、こっちにお二人ともいました? ドーナツ買ってきましたよ」
「でかした! 美生!」
美生が遊びにきた。
「あの、動画編集なら私がしますよ?」
「美生は優しい。好き!」
「あははは」
「美生、彼女を甘やかしてはいけません」
「いいのだ。美生は私のものになったのだから」
「なっていませんよ」
「あははは、なんだか家族みたいですね」
美生にそんなことを言われて、私は顔を顰め、ピロアーネは「ではもっと甘えて良いということだな!」と調子に乗った。
そして美生はとても楽しそうだった。
彼女にそう見えているのなら、まぁ、私の人生はそれなりにうまくいっているのだろう。
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カクヨムコン10に参加中。
どうか♥や★による応援をよろしくお願いします。
ここまででカクヨムコン10の十万文字を達成している……はず。
この次の回はキャラクター紹介となっておりますので、話が動くのはその次の回からとなります。
また、更新頻度も毎日更新から週2~3話程度となる予定です。
それではこれからも応援のほど、よろしくお願いします。
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