瞳に咲く

のぞむ

第1話

 思春期の絶頂たる三年間を佳のクラスメイトとして過ごせることになったのは何よりも幸運なことであって、高望みをすべきでないことは承知の上で、それでも一つ不満があるとすれば、あいつの態度が気に入らない。恥ずかしいんだかなんだか知らないけれど、入学式以降私のことを見ようともしないのはどうも納得がいかない。ずっと進路を隠してた意味も、私服の生徒が日に日に増えていく中で、セーラー服で、毎日律儀にスカーフまでしている意味も、その奥ゆかしさも、分かっているのかいないのか、とにかく無愛想を決め込んでいる。

 私は、私が佳を好きになるよりずっと前から、佳が私を好きなことを知っている。少女が少女として命を燃やしていられる時間を全て佳に捧げたい。それで後悔があっても、それすら愛してみせる。覚悟はとっくにできている。なのに肝心のあいつは、自分自身の心すらよく分かっていない。どうしてもそんな気がしてならない。どうしてあいつは、知らない人ばかりの教室で私を見つけた時の、あの一瞬の瞳の輝きに対して素直になることができないのか。卒業式から入学式までの一ヶ月もない間に、何かが変わったわけでもあるまいし。

 どんなにクールを装っても、あいつはただの根暗人間だ。お手本のような根暗人間の思春期だ。だから好きだった。いじらしくて、可愛らしくて。

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