ドッグス
冬島れん
1.レシオ(1)
「入学式の日に爆発した」
「文化祭で
「猫と刺身の奪い合いしてんの見た」
「国語力皆無」
「スイカを皮ごと食べていた」
「学校のプールに増えるわかめを10袋撒いていた」
「リンゴを一口で食い切った男」
……など、久我レシオはどんな人か聞けばこういう答えが返ってくる。変人の一言で済ませられない存在、それが久我レシオだ。で、なんでそれを俺――
「友也がなんか考え込んでる」
「どうせ夕飯のことだろ」
「あ、コンボ決まったわ」
「俺のチャーシューが……」
ここが千葉県沖にある人工島・しおん島の
つまり、暇つぶしを探すとこいつが絶対に出てくるんだ。
「いやー、俺も世界に羽ばたくチャンスかな」
横で格闘ゲームやってる普通の高校生、みたいなやつが……。
「よっしゃあ! うぃーうぃんえきゅあすたずみっしぇるえれんてす!」
「は?」
「は?」
「あ?」
途中で何言ってるかわからないときがあるけど。
「ちゃんと喋れこの野郎」
心の底からそう思うわ。
「だいたいさ、なんで
「ええー?」
制服の学年ごとに違うネクタイピンも、三年生を示す弓と猫をモチーフにしたバッジもだってはっきりと見えている。そもそもネクタイピンは使われている宝石が違う。三年生がエメラルド、二年生がサファイア、一年生がルビーだ。バッジのモチーフは、二年生が星と狼、一年生が藤と兎、となっている。
「だって俺だけ仲間はずれじゃん。そんなのやだし」
「ただ友也が心配なだけだろーが」
口をとがらせる真弘にそう言うのは
制服も改造や着崩すことも自由で、【ネクタイとネクタイピン、バッジは必ず身につけること】以外服装の校則はない。おかげでブレザーまでしっかり着ている男子は少ない。俺はブレザーを着ているけど、真弘はブレザーを着ずセーターのみ、レシオはブレザーを着ずにダサいデザインのカーディガン、巽にいたってはそもそもブレザーどころかシャツでもない赤地の長袖カットソーだった。こいつはシャアか。
「ち、違うってーの! 俺は単純に仲間はずれにされるのが嫌なだけだから! 別に友也が人に優しいから変なヤツに絡まれたりしてるんじゃないかとかを見張ってようとか思ってるわけじゃねーし!」
「まあまあ、俺なんて席まっちゃ離れてるけどここにいるし。友也といると退屈しないですむから楽しいよ? だからここにいてもいいんじゃね?」
「そっ、そーゆーことだよ、変に考えてんじゃねーよバカ巽!」
「ところでレシオ、なんかかんでなかった?」
「そそそんなことてゅふん」
「そこでかむなよ」
ドアを開けて担任の
「それじゃあ、出席……ってなんで三年生が二年生の教室にいるんだ」
「恋の終着駅!」
レシオが叫ぶ。
「すっげー唐突」
「いや、今ステージから落ちそうだったから」
いい加減にゲームから離れろ。
「もうすぐゴールデンウイークだな。各自、寮の食堂に張られたお知らせは読んだな?」
物理的にゲームから離された三人。特に文句を言っているのはレシオだ。お前、その頭のたんこぶどうした?
「今年は寮が一部修繕工事することになって、今週末からゴールデンウイーク終わりまで一度学校が休校になる。その間のことはきちんと家族には伝えただろうな」
そういえば、そうだった。一昨日それを電話で母親に伝えると、思わぬ返事が返ってきた。
『真弘くんちに泊めてもらいなさい。今年は夫婦水入らずでハワイに行くの。二度目のハネムーンよ。お土産はマカデミアナッツチョコにしておくわね』
留守にするのはわかった。だからって息子を追い出すな。
「え? ついに今年の一年生まで問題児しか入学してこなかったから学校閉鎖かと思ったのに」
「安心しろ。先生が生徒だったときも問題児しかいなかったから」
レシオが軽く舌打ちした。そう言うところだぞお前。
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