第12話

『お泊まりは何日ですか?』


「3日だ。食事も頼む」


『承知しましたごゆっくりどうぞ』



「ソフィアちゃん今日もかわいいね~」



『いつもお上手ですね。ありがとうございます』



私はあれからダンさん達の宿屋で働かせてもらっている。主な仕事内容はお客様のご案内や部屋の掃除、洗濯、簡単な料理など。

小さい頃から体に染み付いていることばかりなので、そつなくこなせている。

 定期的にご利用下さる顔馴染みのお客様も増えた。


最初の頃は、いつ見つかって連れ戻されるのか怖くてビクビクしていたけれど、段々と警戒心も薄れてきていた。

夜中に夢をみてうなされることはしょっちゅうだけど…


信じられないことにダンさん達は、私にお給金まで支給してくれている。

 

亡くなった娘さんのお洋服などを使わせてもらっているので着る服には困らない。


生活に必要な小物を時々買いに行くぐらいにとどめて、この宿屋から外出することは極力控えている。

許されるなら、このままずっとここで働けるといいな。


『ルイーザさん、休憩入らせていただきます。ちょっと買い物に行ってきますね』


「ソフィア、知らない人に声かけられてもついていくんじゃないよ」


『はい。いってきます』




私は気分転換に、久々に街を出歩いてみることにした。

ルイーザさん達は、私を本当の娘のように大切に扱ってくれる。何かお礼がしたいな。



こうしてぶらぶらと街中を歩くことができるようになるなんて、本当に夢を見ているようだ。



ルイーザさん達にどこかでお菓子でも買って帰りたいな。

どこのお店がよいかなと悩みながら歩いている時だった



「ソフィア…?」



『!』


ゾワッと体中に鳥肌が立った。

この声は…

私は声のした方を思わず振り向く。


『お嬢様…』


なぜ、こんなところに?

義姉が貴族街ではないこのような所を出歩くのは珍しい。よりによってこのタイミングで遭遇するなんて。


体に拒否反応が起こり、私は逃げ出した。


「ちょっと!」



背後から義姉が追いかけてくる気配がした




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