第87話
どう考えても非はわたしの方にある。
あの時水夢に怖気付き、真守になにかあってはいけないとあの手を取った。
でも結局わたしは、それを建前とするようにお金をもらっている。
どこをとっても誠実さはない。
正しさをくれた真守に、間違いだらけの自分では太刀打ちできるわけがない。
「っ、」
真守の顔を見ることができない。
俯いていると、突然腕を引かれた。向かった先は真守の自室。
ここへ来て最初の1週間程度お世話になった真守のベッドに、放られた。
ふかふかの毛布と布団にいいマットレス。痛みはない。
でも、決して強い力ではないとはいえ縫い付けられた腕のせいで身動きが取れない。
わたしを見下ろす零度の目。奥を覗けば覗くほど、小さな光が今にも消えてなくなりそうに、悲しげに揺蕩っていることを知る。
「なんでもっと俺のこと頼ってくれねえの」
苦しげに、振り絞るように吐かれた言葉。
電気も点けずに入ったから、扉の隙間から差し込む光が、真守の端正な顔立ちを照らし、影を作る。
ゆっくりと落ちてくる顔が、さっき指摘した場所へと向かう。
「っ、や」
「は、もしかしてセフレ以上の関係だったりする?」
「違っ、」
「じゃあ俺が金やるから抱かせてって言っても同じことだろ」
「っ」
「ゆる。抱かせてよ」
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