第42話

「やっぱゆるの飯はなに食っても美味いな」


「やった、嬉しい。じゃあ今日の優勝は?」


「全部」


「どれかひとつなら」


「肉じゃが」


「ええ、それは真守の好物だからだよ」


「だって美味いよ」


「あ、なら今度塩肉じゃがっていうの作ってみる?」


「んーん、これがいい」




もー、肉じゃが信者なんだから。とはいえ美味しいと言って食べてくれることは単純に嬉しい。わたしが料理をする意味になる。




「そうだ。今日はケーキ買ってあるからあとで一緒に食べようね」


「まじ?最高かよ」


「選びきれなくて3つも買っちゃった」


「まーた食い意地張って」


「違うよ。真守とわけっこするの」


「とか言って全部食わないでな?」


「そんなことしないって!」


「ふは、嘘嘘。全部食べても怒んねえよ」




目尻に優しい皺を作り、笑いを食卓に浴びせる。


だれかと食卓を囲む。これはだれかにとっては日常であり、わたしにとっては非日常。


だからこそ、今のこの時間がかけがえのないものであると気付くことができる。


ただ自分じゃないだれかとあったかいご飯を食べるだけ。それだけだからこそ見落としがちな日常の幸福を、わたしは見つけることが得意だと思う。


わたしは幼い頃から、これが日常ではなかったから。

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