うぃーあー“りびんぐあーまー”! 〜生まれ変わっても3バカの絆は永遠に〜
新菜 椎葉
第1章 はろー“わーるど”!
第1節 プロローグ
第1話 3バカの1人、異世界に立つ
令和になってから、何度目かの冬の同人誌即売会。その帰り道。
「おっも⋯⋯。キャリーケース用意しときゃ良かった」
「いつも言ってるが筋肉が足りないんだ。鍛えた方がいいぞ? そのうち空も飛べるようになる」
「筋肉で空飛べるのは、ハゲマントと平和の象徴だけで十分だよ脳筋」
通行の邪魔にならないよう、縦に並んで歩く男たち。1人はキャリーケースを引き、2人はリュックサックを背負い、手には手提げ袋を抱えている。
それぞれが己の
けたたましいクラクションの音と共に、1台の乗用車が滑ってくるのを目にし──
(──あ、そうだ。俺それで死んだんだ)
場面は回想から現実へと戻ってくる。
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──かつては多くの使用人達が働いていたであろう古い館。しかし、今は
そこに、とても小さな──放っておけば消えてなくなってしまうほどの──魔力の塊が、闇が集まるようにして産まれてきた。
依代無しには存在を維持することすらも困難な、微弱で頼りない、それでいて少しだけ幸運だった精霊の雛。
雛にとって幸運だったことは、依代となりうる“器”がすぐ近くにあったこと。
所々が錆付き、少し動かすだけでも節々が軋む鉄の全身鎧。俗にプレートアーマー、板金鎧とも呼ばれる、伽藍堂の“器”。
そのままでは低級の幽霊にも負けてしまう精霊の雛が、幸運にも何も宿っていない器の近くに産まれたという“偶然”。
確率の低い“偶然”が重なったのならば、それは何者かによって定められた“必然”だったのかもしれない。
因果関係はともかく、産まれたばかりの精霊の雛は、使い手のいない鉄の鎧という“器”に宿り、真にこの世界へと産まれ落ちた。
アンデッドとしてはありふれた──この場合アンデッドでは無いが──
(で、その精霊の雛が俺って訳。それにしても、ところどころ錆びてんなこの鎧)
誰に聞かせるでもなく、心の中でそう呟く彼。
然もありなん。鎧に実体を持たない精霊が宿っているだけなので、発声するための声帯がないのだ。なにより、音なんて出したら周りから
彼らの生態は様々だ。
生前の習慣なのか、黙々と鍛錬をする者。何を目的としているのか、フラフラと彷徨い続ける者。音に反応し、敵味方はおろか強弱の区別もなく襲いかかるだけの者。
宿った存在によって、生ける鎧という
では、転生者たる彼はというと──
(騙して悪いが、死んで貰おう)
(卑怯とは言うまいな)
(いい鎧着てるじゃねえか、それくれよォ!)
──
鎧に錆が浮いているなら、無事なパーツと付け替えれば良いじゃない。ほら、お前さんの前に丁度いい鎧が居るぜぇ。と、心の中のアントワネットとコロンブスが囁いたのだから仕方ない。
待ち伏せからの不意打ち、高所からの奇襲、戦いに割り込んで漁夫の利と、思いつく限りに倒せそうな奴らを倒して行った。
通常、鎧に非実体系の魔物などが宿った存在である生ける鎧に、ただの物理攻撃は効果が薄い。
鎧は所詮器に過ぎず、器を損傷したところで本体には何の痛痒を与えられないからだ。そのため、多くの場合聖水や魔法による攻撃が必要とされる。
だが、彼は違う。微弱とはいえ精霊であり、さらには鎧という戦う上で有利な“器”に宿っている。
器は同じかつ素の能力で負けているため、真正面から戦えば負けてしまうだろうが、それは不意を打って
(あ"〜⋯⋯なんか経験値だか魂だかが染みるんじゃぁ〜)
勝者たる彼に、敗者である生ける鎧からモヤのような何かが吸い込まれていく。
闇に属する精霊である彼は、同じ闇に属する非実体存在を吸収することが出来る。強大な力を持つ精霊ならばわざわざ倒さなくても吸収することが出来ただろうが、転生者とはいえ産まれたての赤ちゃん精霊にそこまでの力は無い。
余談だが、精霊は自分と同じ属性に属するものを吸収することが出来る。火属性の精霊ならば火を、水属性ならば川や海などの水を、土属性ならば土や岩石を吸収し力に変えることが出来る。また、それらを生み出すことも出来る。
非常に残念なことに、彼が創造する側に回るのは随分先の話になるだろうが。
閑話休題
(うっし、一応錆びてる部分はあんま無いな。分解できないところとかはアレだけど)
幾度かの不意討ちを経て、彼の
本体である精霊の力も増し、今ならば一体一で幽霊と戦っても勝てる程になった。二体以上の相手はまだ厳しい上に、上位種たる
(まあ、世界最強になっても不意打ちは続けるけど。わざわざ正面から戦うとか、プライドが満たされるだけのオ〇ニーじゃんね?)
彼は出来る限り安全策を取り続ける男だった。
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