鈴の音恐怖症

かみしろんぐ~

一個目:メールから

なあ、肝試しにいかないか?


そうたくやからメールが来たときは多少わくわくしていた。

夏休み中、俺はずっとゲームして寝て、ゲームして寝ての繰り返しだった。別に友達がいないから遊びにいけない訳では…ない、はずだけど…ともかく!青春らしいことをしてなかったんだ。だから、たくやから肝試しに行こうと誘われた時はうれしかったし人生で初めての肝試しに胸を躍らせていた。だけど…



六「…なあ、たくや。やっぱ肝試しじゃなくてゲーセンとかに行かない?」

いざ行くとなると怖いものだ。しかも、人間がおばけ役をして驚かせるのではなくてマジのおばけを見に行こうというのだ。…先に言っといて欲しかった

たくや「はぁ?なんだよ六もビビってんのかよ。あとちょっとで着くのにここから引き返したくないだろ?なぁ!いずき」

いずき「足、震えてんぞ」

たくや「お前に振った俺が悪かった」

そう指摘するいずきだって声が若干震えている。やっぱりみんな怖いんじゃん…いやだなぁ、ゲーセンの方が楽しいのにな。

そんな愚痴を心の中でこぼしていると肝試しの会場に着いた

ここはウスグラ廃病院。看板らしきものはあるけど肝心な病院名が薄黒くなって読めないのでウスグラ廃病院という名前で呼ばれることになった

たくや「ここだ。お前ら懐中電灯と鈴、持ってきたか?」

六「持ってきたけど…鈴は何に使うの?」

いずき「家中探し回って見つけたんだからな?これで結局使わなかったらお前をおばけにしてやる」

たくや「遠回しに殺すって言わないで…。大丈夫だよ!ちゃんと使うよ」

いずき「いつ使うんだよ、生きてるかどうか確認するためか?」

たくや「違う違う!なんも知らないんだね。まあ、そん時になったら説明するよ」

たくやはイきり散らかしていて「俺がおばけなんかぶっ飛ばしてやる!」なんて息巻いているが、俺といずきは今年の夏合宿にて行われた怪談話大会にてずっと布団に包まりびくびくしていたことを知っているためあまり信頼していない。もっと言えばなにか起きたらあいつを盾にして逃げようと考えていた


名前の通り薄暗く、様々な医療器具がそのまま放置された廃病院のなかに、たくや先導の下入っていった。

最初は威勢がよかったたくやも段々とビビり始め10分ほど歩いた現在では恐怖のあまり動けなくなってしまっていた。

いずき「だから言ったじゃん。なんで肝試ししようなんて言い出したんだよ」

たくや「だ、だって…テレビで肝試し番組やっててめっちゃ面白そうだったんだもん…」

なるほど、たくやが肝試しをやりたいといったのはそれがあったからなのか。たしかに以前からたくやは何かと周りに影響を受けやすかった、例えばどっかの赤い帽子を被った配管工のおっさんが出てくるゲームに影響された時は「俺は三段ジャンプできんだぜ!」とかいってそれを実践するときに初めの助走で盛大に転んで頭から血が出ていた、これでも中学1年生なのだから驚きだ。バカで猪突猛進男なのだが周りへの気遣いや性格の良さもあって結構人気だったりする。…だからと言って俺たちを巻き込むなよとは思うが…

六「とりあえずもうこんなとこ出ようよ、だからさっさと立てって。な?」

いずき「ろくの言う通りだ。この後はゲーセンにでも行って散財しようぜ?」

たくや「あ、嗚呼。そ、そうだな。よし、か、帰るか」

たくやをなんとか立たせ俺たちは今来た道を引き返しながら雑談をしていた

いずき「たくや、お前はもっと計画性を養ったほうがいいぞ」

たくや「う、うるさいやい!そ、それにこの肝試しだってお前らがやめたいっていうから仕方なくやめたんじゃん!」

いずき「…こいつ、置いてくか?」

ろく「そうだな、たくやなんて奴はいなかったってことにしよう」

たくや「ごめんて!冗談じゃん!」

wwwwwwww

ハハ!結局おばけなんていなかったな、そういえば鈴、使わなかったけど何に使う予定だったんだろ

六「なあたくや、結局鈴って何のために持ってきたんだ?」

いずき「あ!確かに、お前後で飯奢りか半殺しな?」

たくや「ええ…鈴はおばけがたくさん出る異世界にいくための鍵なんだよ、こんな感じでね」



チリンチリ~ン



六・いずき・たくや「「「あ」」」


初めて体験した、気絶する感覚。視界がぼやけ、そして


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