第2話 両方抱いて、何が悪い?

神父が慌てる。


「しかしな、オロチ殿・・・。

 結婚は1人としかできないんじゃ。」


「ふん、あなたは事実婚をご存じない?

 事実婚であれば、何人とでも結婚できるのだぞ?」


「は、はあ・・・。」


神父は呆れた様子だ。


俺の家系は代々「ヤマタ」。

「ヤマタ」とは、陰部が八股、つまり八本であることを指す。

俺のヤマタのすべてを魅惑の穴に挿れしとき、俺の能力は覚醒する。

親父の言葉だ。

これによると、俺には8人の嫁が必要なのだ。


そして今、1人目と2人目を獲得せんとしている。


「神父よ、俺には8人の嫁が必要なのだ。

 だから、多重婚をわかってくれ。」


「まあよいわ。

 儀式だけは執り行ってやろう・・・。」


神父はしぶしぶ了承した。

そして、お決まりの口上を述べる。


「新郎、病める時も 健やかなる時も

 富める時も 貧しき時も ライラとエレノアを妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


「ああ、誓おう。

 2人とも平等に抱くさ。」


「コホンっ。

 余計なことは言わんでよろしい!」


神父がぴしゃりという。


「新婦、病める時も 健やかなる時も

 富める時も 貧しき時も オロチを夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


「ええ。」


「もちろん。」


ライラとエレノアも誓う。


「それでは、誓いのキスを」


新婦がそう言うと、俺と2人の嫁は三角に並び、3人でキスした。


「あわわわ、なんと破廉恥な!!!」


あまりの光景に神父が取り乱す。


キスをした瞬間、花びらがぱあっと飛ぶ。


「私たち、晴れて夫婦ですわね!」


エレノアがそういうと、俺は2人の肩を抱き寄せ、順にキスした。


「俺はこんな素晴らしい2人の奥さんをもらえて、世界一の幸せ者だ!

 わっはっはっはっ!!!」


神父は額に手を当て、だめだこりゃ、と天を仰いでいる。


こうして、俺たちの結婚式は無事終わった。


さて、俺たちは神父の用意した別宅にて、初夜を過ごした。


翌朝、神父が訪ねてきた。


「私はいやいや儀式を執り行ったがの、やはり納得いかん!」


なにやら、俺たちに説教をしに来たらしい。


「なんだい神父さん、俺たちはもう愛を誓い合ったんだ。

 今更取り消せないぜ?」


「君たちはいったいなんだ、この破廉恥め!!!」


「2人と結婚しちゃ破廉恥とはどういうことだい。」


「常識的に考えてだな!!!」


「常識など俺たち夫婦には通用しないね。

 だいたい、昔は一夫多妻が当たり前なんだ。

 強くてもてる男がたくさんの女性を幸せにして何が悪い?

 一夫一妻制にしているせいで浮気だなんだで不幸になる女性が発生するのではないか?」


「ぐぬぬぬ・・・。

 しかしな、2人もの奥さんを同時に養えるのかね?」


「ああ。俺はちまたじゃ『ヤマタのオロチ』って通り名で有名な冒険者でな。

 稼ぎは十分なんだよ。

 嫁を平等に愛し、平等に抱く、これの何が悪い?」


「ぐぬぬぬ・・・・。」


「さては神父さん、モテモテの俺がうらやましいだけだろ?」


「ムキーーーーー!!!」


神父は顔を真っ赤にして去ってしまった。


「あーあ、帰っちゃったな。

 これからが面白いところだってのに・・・。」


これだから凡人は・・・。


ライラが俺の肩にそっと寄り添って言う。


「凡人にはわからないよ。

 私は幸せだよ?

 だって、浮気なんて概念ないし、奥さんの順位付けだってないんだもん。」


俺はコーヒーをずずっと飲み干し、ライラにキスした。


「うふふっ、コーヒーくさーい。」


一夫多妻で何が悪い、こんなに幸せじゃないか。


「エレノア、朝だぞ、起きろ!」


「えー、もう朝ですかー?」


俺はエレノアをたたき起こした。


「初夜は最高だったな。

 もう一回戦するぞ、ライラ、エレノア!」


そうして、俺たちは起きたてにもう一回戦したのだった。

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