第一章 先導者
第1話 人気配信者のなりすまし
VTuber、いわゆるバーチャル配信者。
供給過多と言われるほどに飽和した存在になりつつある昨今。
そんな中10年近い実績により人気を博しているグループがあった。
それがバーチャルアイドルプロジェクト『ブイアクト』。
「こんあーるま♪ 迷い人の皆々様、案内役はこのワタクシめにお任せあれ! 道化を導く道化こと導化師アルマですー」
《待ってた!》
《こんあるまぁぁぁあ!!》
《無限に配信してください!!》
《無限はムリでしょ。適度に休みつつ毎秒配信してくれればそれで良いから》
怒濤の勢いで流れるコメント。
それを向けられているのは一人の動く女性イラスト。
ピエロモチーフのキャラに現代風のサーカス衣装、額に被せられた赤鼻トナカイの仮面は彼女のトレードマーク。
その人気は国内トップとまで言われるVTuber『導化師アルマ』
「はいはーい。今日は告知通り歌枠やってきますよっと。どんな曲でもお任せあれ♪」
喋って、歌って、ときには踊る。
コメントを介した対話によりファンとの距離をグッと縮める。
ファンの推し活に対し、リアルタイムで反応を返せるライブステージ。
それがバーチャル配信という新時代のアイドルの形。
もしかすると『導化師アルマ』は現代で最もファンの多いアイドルと言っても過言ではないのかもしれない。
「ふぅ。今日はこれにて終幕!」
そんな彼女の配信だが、その日はいつもと少しばかり違う点があった。
《そいえば今日ゲストがいるとか言ってなかった?》
《新人をゲストとして連れて来るとかなんとか》
《結局一人の歌枠だったけど》
《ひょっとして忘れてた? 流石に終盤になって今更紹介とかないよね》
彼女の言っていた言葉を思い出した一人のファンの言葉を皮切りに、疑問が飛び交い始める。
それに対する返答により、配信は一層不穏な空気が流れることになる。
「え? 新人なら……もう喋ってますけど?」
「あのーみんな? アタシさっきから一言も喋ってないんですけどー?」
《はい?》
《??????》
突然のカミングアウトにコメントは疑問符で溢れかえった。
改めて理解させるために、私はネタ明かしをする。
「"こんあーるま♪ 道化を導く道化こと導化師アルマ"……さんの声真似でしたぁ。へへ……」
《え? 似すぎじゃね?》
《全然気づけなかった……ちょっとショック》
《いや流石に自演では?》
《ガチならこの新人ヤバすぎるww》
人気配信者の声だと誰もが信じて疑わなかった。
本当の顔が見えない以上それが本人かは声で判断するしかない、それがVTuberという存在。
(こんな騙すようなマネして喜んで貰えるんですかねぇ……でも、私にはこれしかないからぁ)
何故こんなことになったのかって?
そんなの私が知りたいくらいだ。
私はただアイドルを推しつつ、アイドルを目指してただけのドルオタアイドル志願者。
それがいつの間にかブイアクトの新人としてトップVTuberを真似ることになるなんて。
こうなった経緯を説明するには少しばかり長い説明が必要になる。
具体的には……5話くらい、ですかねぇ。
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