二人称
館華カオル
第1話 飛梅
昔、
飛んだことがあるという梅
一度こっきり愛する人のもとへ飛んだ木
時間も空間も
お前を制することができなかった
お前の情熱だけが
お前を行かせた!
飛べないよ
今は何処へも行けないよ
あの人はもういない
この世のどこにももういない
だが、私の執着心が
私を生き永らえ、老いさらばえても
なおここに捉える
みんなが私を見る
私のことを知っている
あの人が伝説化され
そして私がひとつのあかしとなって
でも
許されることなら
もう一度 飛びたい
鳥ではないから
飛べるわけではない
私は一度滅んで
生まれ変わっただけ
あの人の前で
新しく生まれ変わっただけ
飛びたい
飛びたいよー
あの人のもとに
あのときの情熱のために
羽根があれば
久遠の時の流れを超えて
あの人のもとに帰れるのに
羽根がない
あの人がいない
あのときの情熱さえない!
昔、
お前は飛んだという
もはやしかし
かつてお前が追い越した時間にも空間にも
お前は追いつけないでいる
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